2009年12月2日水曜日

2度かかることもある?

まずはニュースから。

○米の小児科医、新型インフルに2回感染
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20091125-OYT1T01107.htm

 米ウェストバージニア州の女性が新型インフルエンザに2回感染したことが分かった。
 地元紙チャールストン・デイリー・メールが24日、報じた。
 報道によると、この女性は小児科医で、8月に息子とともにインフルエンザを発症、検査で新型と判定された。10月に再び息子とインフルエンザの症状で寝込み、再び新型と判定された。米疾病対策センター(CDC)が両方の試料を検査し直したが、やはりどちらも新型だった。
 CDCは小児科医の問い合わせに「季節性でもまれに同型のインフルエンザに2回感染することがある」と説明したというが、一般的には、一度感染すれば免疫ができるため、二度はかかりにくい。

recombinomicsによると、8月、10月に母親(医師)と学校に通う息子が感染。
最初は周りも感染者が少ないため軽い感染で弱い免疫がついた。その後学校で流行し頻繁な接触により繰り返し暴露されると最初の弱い免疫では対抗できずにまた感染し発症。こうした弱い免疫をもたずに感染する前まったく健康だった人は、より深刻な症状につながる可能性があるとしています。
 http://www.recombinomics.com/News/11250901/H1N1_X2.html

実際、この米の例は レアケースかなと思っていたら、Twitter上で医師から複数回感染するケースが見られるという情報をいただきました。 詳しくは以下のページです。
 http://drkei.blogspot.com/2009/12/blog-post_02.html

一般には、最初のニュースの末尾にあるように1度かかると免疫ができるためワクチン接種は不要とされています。

もちろん周囲の状況にもよりますし、ご本人の体調・ハイリスクか否か、抗ウイルス薬の予防投与(早期投与)を行ったか、どんな症状が出たか、その経緯はどうだったか等にもよりますが、最初に感染したときしっかり熱が出る(抗体ができているか)等の状態だったかどうか、念のため医師と十分にご相談ください。

2009年11月27日金曜日

新型インフルの副反応について

○厚生労働省/新型インフルエンザワクチンに関する安全性評価について
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/s1121-2.html

ワクチン接種について

基礎疾患をもつ高齢者の方にワクチン接種することに対して、少々注意をうながす記事が出ていますので、ご紹介です。

基礎疾患ある高齢者に留意を―新型ワクチンで厚労省検討会
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091121-00000001-cbn-soci

 新型インフルエンザワクチンの安全性の評価について、厚生労働省は11月21日、「第4回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」と「第1回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会」を合同開催した。会合では、議論を受けて「重度の基礎疾患を有する患者では、接種時および接種後の処置などに留意する必要がある」などとする取りまとめ文書「新型インフルエンザワクチンに関する安全性評価について」を了承。この文書は、長妻昭厚労相に報告される。

 副反応検討会は、予防接種や内科分野の専門家らで構成され、この日は東京都健康長寿医療センターの稲松孝思・感染症科部長ら委員3人が参加。また、安全対策調査会は独協医科大の松本和則特任教授ら委員4人が出席し、内科や小児科の専門家8人を参考人として招いた。

 この日の会合では厚労省側が、新型インフルエンザワクチンの接種後に死亡した21人はいずれも50歳以上の基礎疾患を有する人とするデータを提示。主治医は基礎疾患の悪化や再発が主な死因として、ワクチン接種と死亡の関連について「関連なし」「評価不能」などと報告していると説明した。

 厚労省に協力して死亡例の評価を行った副反応検討会の稲松委員は、基礎疾患の中でも特に間質性肺炎、ぜんそくには注意が必要との見方を示した。安全対策調査会の工藤宏一郎参考人(国立国際医療センター国際疾病センター長)は、「80-90歳の基礎疾患のある人に打っていることが気になる。打つべきではない、と言うわけではないが、米国で高齢者には基礎免疫があるとの報告があり、日本の患者は若年層に多い。にもかかわらず、強迫的にワクチンを打たなければならないという雰囲気がある」と述べた。

 これに対し、安全対策調査会の河野茂参考人(長崎大医学部内科学第二教室教授)は、「季節性インフルエンザに多くかかるのは子供だが、死亡するのは高齢者で、新型インフルエンザでも同じ。ワクチン接種の目的はもともと、感染予防より重症化予防。それを忘れてはいけない」と指摘。「接種と死亡の関係は検証すべきだが、死者が出たからとリスクがある人の接種を制限するのはまずい。ワクチンが一番必要な人は誰か、精査すべきだ」と主張した。

 一方、安全対策調査会の久保惠嗣参考人(信州大副学長)は、在宅療法中の人が感染する可能性は低いと指摘し、「優先して打つ必要があるのか」と述べた。副反応検討会の岡部信彦委員(国立感染症研究所感染症情報センター長)は、「優先接種順位は、優先的に接種できるということであって、接種すべきということではないだろう」とした。 こうした議論を踏まえ、事務局が「新型インフルエンザワクチンに関する安全性評価について」とする取りまとめ案を作成、一部修正の上了承した。

 この中で死亡例について、「限られた情報では因果関係が評価できないものもあるが、大部分は基礎疾患の悪化や再発の可能性が高いと考えられ、死亡とワクチン接種との明確な関連が認められた症例は現時点ではない」とした上で、「ワクチン自体に安全性上の明確な問題があるとは考えにくい」と結論付けた。しかし、重度の基礎疾患を有する人については、ワクチンの副反応が重篤な転帰につながる可能性を否定できないため、「接種時および接種後の処置などにおいて留意する必要がある」とした。また、日常生活が極度に制限される程度の障害を心臓、腎臓または呼吸器に有する人の接種に当たっては、接種の適宜を慎重に判断するよう医師に求める方針を示した。

 接種のメリットについては、基礎疾患を有する高齢者が感染した場合には重篤化する可能性が高いため、「リスクと比較して、相対的に接種のメリットは大きいと考えられる」としている。

2009年11月19日木曜日

10mLバイアル取りやめへ

ようやくですね。

○不評「大瓶」ワクチン、1月から使用取りやめ
 http://www.yomiuri.co.jp/feature/20090425-436828/news/20091117-OYT1T01053.htm

 新型インフルエンザ用ワクチンの容器について、厚生労働省は17日、来年1月以降に出荷されるワクチンの容器を1ミリ・リットル入りと妊婦用の0・5ミリ・リットル入りの2種類とし、10ミリ・リットル入りの大瓶の使用を取りやめると発表した。
 大瓶は小規模な医療機関などから「使い切れずに余ったワクチンが無駄になる」といった批判が出ていた。厚労省は「現場の声を取り入れた対応」と説明している。
 季節性インフルエンザ用ワクチンでは通常1ミリ・リットル入りの小瓶が使用されるが、厚労省は新型用ワクチンについて、輸送の効率化や大量製造に適していることから、大瓶を使用。今月上旬までに出荷された約330万ミリ・リットルのうち、約180万ミリ・リットルが大瓶だった。
 しかし、ワクチンは開封後、24時間以内に使い切らなければならず、大瓶の場合、子供だと約30~45回分が入っている。規模が小さい医療機関では通常の診療をしながら接種していると、大瓶のワクチンを1日で使い切れないため、休診日などにまとめて予約を受け、集団接種を実施するといった方法で対応していた。
 厚労省には都道府県や医療機関から、大瓶による出荷の見直しを求める意見が多数寄せられていた。これを受けて、来年1月以降は大瓶で予定していた出荷分をすべて1ミリ・リットル入りに切り替えることにした。ただ、製造計画が固まっている年内の出荷分は、従来通り大瓶が使用される。

2009年11月12日木曜日

学会からの情報発信2つ

○日本産科婦人科学会
 http://www.jsog.or.jp/index.html

 妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A
 ▽今回(平成21年11月9日)改定の要旨 ▽一般の方向け ▽医療関係者向け

○日本感染症学会  緊急提言
 一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」(第2版) (11月5日) 
   http://www.kansensho.or.jp/news/090914soiv_teigen2.html
   10代の患者の治療の在り方を追加

2009年11月11日水曜日

接種回数について

大臣発表なので、今回は間違いないでしょう。

○ワクチン接種、原則1回=高校生以下は2回-厚労省 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091111-00000169-jij-soci

 新型インフルエンザ用ワクチンをめぐり、長妻昭厚生労働相は11日、高校生以下の年齢層を除き、接種回数は1回にすると正式決定した。これまでは2回を原則としていたが、1回と2回とで得られる免疫がほとんど変わらないとの臨床試験結果から、専門家らが1回接種で十分とする見解をまとめたため。

 厚労省によると、持病のある人、妊婦、高齢者、1歳未満の乳児の保護者はすべて1回接種。13歳未満の子どもは基礎的な免疫を持っていない可能性があるため2回とし、持病のある人のうち免疫状態が悪化している人は医師の判断で2回も可能とした。また、中高校生は当面2回を前提とし、12月中に臨床試験結果がまとまるのを待って1回で済むかどうか判断する。

2009年11月9日月曜日

多言語情報について

(財)自治体国際化協会のサイトから。

○新型インフルエンザに関する多言語情報の雛形やリンク集  
  http://www.clair.or.jp/j/culture/flu/tagengo/index.html

2009年11月7日土曜日

小児新型インフルエンザ重症例の動向

日本小児科学会から。
年齢が低い幼児の脳症の発症の増加は、全体的に新型インフルエンザにかかる年齢層が低くなってきているので、そうしたことも一因かもしれません。

小児新型インフルエンザ重症例の動向(11 月5 日新型インフルエンザ対策室第5 報)
 http://www.jpeds.or.jp/influenza/influenza_091105.pdf
(以下、一部抜粋)
インフルエンザ脳症についてはこの数週間、症例の報告が増加しています。また、心配していたように2 歳~5 歳の幼児の発症が報告されるようになりました。今後も脳症の発症年齢の低下が起きるものと予想されます。一方、前回同様、初発神経症状として「異常な言動」や「意識障害」から始まる症例が目立っています。注意すべき点として、静岡こども病院の救命救急センター植田先生からの報告で、けいれん・呼吸障害を来たし、急激な悪化を示す症例の中で、hypovolemia による急激なショック状態が背景にある貴重な症例の提示がありました。「脳症」の症状を示し、急激な悪化を見る例の中には、この「hypovolemic shock」の観点から治療にあたる必要性も考慮すべきと思われます。次に脳症と同時にウイルス性肺炎が起きていないかどうか、届出施設に対するアンケート調査を行いました。回答いただいた27 例の中で、脳症と同時に肺炎が起きていた症例が10例(37%)と高率にみとめられました。これは季節性の脳症ではほとんど認められなかった特徴です。ただし、現時点ではステロイドパルスが肺炎の重篤化に繋がったケースは認められていません。今後、もしそうした症例を経験された先生は、ぜひご報告いただければ幸いです。

2009年11月5日木曜日

ヒトからネコへ

アメリカで、ヒトからネコに新型インフルエンザが感染したというニュース。

○米で猫が初の新型インフル、人から感染?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091105-00000433-yom-int

 米獣医師会は4日、新型インフルエンザに感染した猫が初めて見つかったと発表した。

 この猫は、アイオワ州の家族が家の中で飼っている13歳の猫で、3人家族のうちの2人がインフルエンザを発症した直後に元気がなくなり、獣医師の診察を受けた。検査の結果、新型ウイルスが確認された。家族から猫に感染した可能性が高い。猫は現在は回復し、ほかの人や猫にさらに感染を広げた形跡はなかった。

 新型インフルはもともと豚から人に広がったと見られ、カナダなどでは、人から豚への感染が確認されていた。鳥やいたちの仲間フェレットも感染する。季節性インフルエンザの場合、猫のほか、犬や馬も感染することが知られている。 同協会は「人畜共通感染を起こすウイルスはあるので驚きではない。飼い主はペットの様子に注意すべきだ」と呼びかけている。米専門家はメディアに対し「ペットから人へ感染する証拠はない。重大な懸念ではない」としている。

 ちなみに、最近ではフェレットを飼っていらっしゃる方が多いですが、フェレットは新型インフルエンザの感染の実験にも使われるほど感染しやすいので、飼っていらっしゃる方は注意なさってください。

2009年11月1日日曜日

混乱は収まる?

以下のQ&Aに、治癒証明書、陰性証明書は「望ましくない」と盛り込まれています。 これで、文部科学省とともに出揃いましたね。

○厚生労働省 新型インフルエンザ(A/H1N1)に関する事業者・職場のQ&A  http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/infu1013-1.pdf

その他の通達など。
○新型インフルエンザワクチンの接種について
 −妊娠されている方へ10月29日
 −基礎疾患を有する方へ10月29日
 −「新型インフルエンザワクチンの優先接種の対象とする基礎疾患の基準」手引き     http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_ninpu.html

2009年10月29日木曜日

重い副作用の発生率は約0.0007%

「新型」ワクチン、重い副作用が4件
 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=16029

計10件「頻度高いと言えない」
 厚生労働省は28日、医療従事者に対する新型インフルエンザワクチンの接種で、ショック症状(アナフィラキシー)や肝機能障害などの重い副作用(副反応)が、新たに4件報告されたと発表した。
 19日の接種開始以来、重い副作用の報告は、これで計10件。調査中の1件を除き、いずれの症状もほぼ回復しているという。同省は「現段階で副作用頻度が高いとは言えない」としている。
 10件のうち、新たな4件を含む6件は、推定約85万人への接種の中で発生した。重い副作用の発生率は約0.0007%となった。季節性ワクチンの約0.0003%より高いが、同省が医療機関に積極的な報告を求めているため、報告率が高くなっている可能性もある。押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「季節性ワクチンに比べ著しく副反応が強いということはなさそうだ。妊婦や小児などに接種した場合にどうなるか、監視する必要がある」と話している。

妊婦さんに保存剤無添加のワクチン

新型インフルエンザのワクチン接種について、記事とは直接関連がありませんが、第3回(11月6日)ワクチン出荷から保存剤無添加のワクチンが流通する予定で、妊婦さんは11月中旬まで待つことで接種機会が得られると厚労省から通達が出ています。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/10/dl/info1022-01.pdf

ワクチン接種前倒しのものは保存剤入り。
接種を考えている妊婦さんは、どちらがよいかかかりつけの産科医と相談をするようにとする自治体が目に付きます。

 厚生労働省はかかりつけ医(とくに産科)を通して妊婦さんに周知をとしていますが、なかなか伝わらないような気がするので、もし知り合いに妊婦さんがいらしたら、教えてさしあげてください。

2009年10月28日水曜日

ワクチン接種で「抗体価の上昇」という意味

16日専門委員会に出席の委員の方や厚生労働省の医系技官等から、政府三役への逆襲が始まっているようです(つまり、健康な成人以外でも、基礎疾患をもつ人や13歳以上の人は、すでに季節性で基礎免疫をもっていると"推察"されるから全員接種1回でいいじゃないか、という話を流している)。

以下は、16日の決定に関して、上昌広・東大医科研特任准教授の話(ロハスメディカルの記事から抜粋)。
 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/18001220.php?page=1
 

こういう場合に行われるのは非劣性試験と言って、標準治療が存在する時に、効果は劣る代わりに別のメリットがあるような治療法をテストし、劣る効果と得られるメリットとを比較検討するためのもの。今回の場合、標準治療は2回打ち、効果は抗体価の上昇、メリットは接種人数が増えること、になる。

 そもそも抗体価の上昇が指標として適当なのかという問題、被験者数が少ないために出てきたデータが実際に取りうる値がメチャクチャ広いという問題にはあえて目をつぶって、抗体価は効果の指標として正しく、78%と88%が真であると見なしたとする。それでもこの試験から導き出せるのは、2回打ちに比べて1回打ちは抗体価の上昇が10ポイントほど低いけれど、それを容認してでも接種人数を増やすべきか、ということになる。そして、これは科学的な判断というよりも、国民が容認するのか否かという議論をしないといけない話だ。また通常は、試験結果が出てから議論するのではなくて、最初にこの程度の低下なら許容しようかというのを議論したうえで、試験に入る流れになる。こんなのは学生でも半年ぐらい勉強すれば分かること。

 たかが10ポイントと思うかもしれないが、先ほども述べたように被験者数の問題で幅のブレる可能性が相当あるということと、健康人を対象に理想的な環境下でやった治験の結果は、実際の臨床現場に持ってくると大抵出方が全然違う。そんなのは臨床試験をやったことのある人間なら皆知っていることのはずだ。今回、2回打ちに比べて抗体価の低下があるということは、1回打ちにした時に免疫のつかないという人が続出する可能性を覚悟しないといけない話だ。

ちなみに欧州の判断もワクチンの種類は違えど参考になります。

新型インフルエンザワクチンの接種回数:欧州の判断
東北大学大学院感染制御・検査診断学分野講師 厚生労働大臣政策室アドバイザー 森兼啓太氏(by MRIC)
 2009年10月16日、厚労省で行なわれた専門家による会議において、新型インフルエンザワクチンの接種回数に関する議論が行なわれた。2回接種を前提としていた本ワクチンに関して、国立病院機構の4施設の医療従事者を対象に実施した本ワクチン接種後の抗体価調査から、1回の接種でもそれなりの抗体価上昇がみられることが判明した。流行が拡大している今、限られたワクチンをできるだけ多くの優先順位の人々に早めに接種すべく、健常成人(大部分の医療従事者がこれに含まれる)の接種回数を2回から1回に減らすという合意に至ったのは妥当な線であろう。

 ところが16日の会議では、この抗体価の上昇は季節性インフルエンザであるAソ連型(新型インフルエンザと同じH1N1亜型)への曝露によるものであろう、それなら妊婦や基礎疾患を有する人、19歳以下の成人もある程度の免疫を持っているはず、と推論に推論を重ね、妊婦や基礎疾患を有する人、13歳以上20歳未満の人をすべて1回接種でよいとする方向性を打ち出してしまった。

 これらの人々におけるワクチンへの免疫応答に関するデータはない。しかもこれらの集団への接種はまだ差し迫っておらず、ここで一刻を争って回数を決定しなければならない状況にはない。こういった施策決定方法に強い疑問を持った足立信也務官が19日急遽会議を開き、筆者も含めた数名からさらに意見聴取を行ない、健常成人以外の接種回数に関する変更(2回接種から1回接種)を白紙に戻したことはすでに報じられた通りである(10月20日の拙稿:MRIC臨時vol.301などを参照)。

 さて、その翌日には中国から新型インフルエンザワクチン接種後の抗体価上昇に関するデータが発表され、12歳から17歳までの550人を対象としたスタディでHI抗体価40以上を全体の97%に認めたという。そしてこのデータが発表された3日後の欧州医薬品局(EMEA)のワクチンに関するUpdateが注目されていた。
この委員会では、欧州で認可されている3つの新型インフルエンザワクチン、Celvapan、Focetria、Pandemrix(製造者はそれぞれバクスター、ノバルティス、グラクソ・スミスクライン)の3つについて検討した。これらのワクチンは鳥インフルエンザA(H5N1)で得られたデータをもとに認可されているため、ほとんどすべての人が免疫を持たないと考え、2回接種が基本であった。
今回の委員会では3社とも健常成人における接種後の抗体価上昇に関するデータを提出した。その結果、PandemrixとFocetriaについては、1回の接種で十分な抗体価の上昇がみられた。例えばPandemrixでは40名の健常成人(接種前に抗体価が基準値以下のもの)の全員が1回接種でHI抗体価40以上1]、Focetriaでは50名の健常成人(接種前に抗体価が基準値以下のもの)のうち49名(98%)が1回接種でHI抗体価40以上という反応をみている2]。にもかかわらず、委員会の勧告としては健常成人に対して2回接種のスケジュールを維持することとされた。勧告は、「One
dose of 0.5 ml at an elected date. A second dose of vaccine should preferably be
given.」 すなわち、「1回接種、2回めの接種が望ましい」という表現になっている。さらに、18~60歳では「1回接種で十分かもしれない」と付記された。

 この会議でどのような議論がなされたかに関する詳細は不明だが、臨床試験に基づいた慎重な判断を行っていること、わからないことはわからないと正直に述べているところが、まさに科学的な判断と言える。日本における10月16日の会議での結論や、その後のコミュニケーションの拙速かつ非科学性とは対照的である(政治的に出された結論であればまだ理解できるが)。コミュニケーションという点では、EMEAの判断を報じる大手メディアの記事は筆者の知る限り存在しない。この情報は国民にとって極めて重要な情報なのだが。
1]http://www.emea.europa.eu/pdfs/human/pandemicinfluenza/Pandemrix_PI_23oct09.pdf
2]http://www.emea.europa.eu/pdfs/human/pandemicinfluenza/Focetria_PI_23oct09.pdf

2009年10月24日土曜日

ワクチンの副作用

重い副作用について「季節性より少し多いという印象」という菅谷先生の談。

○新型インフルワクチン、重い副作用は接種2万人中4人
 http://www.asahi.com/special/09015/TKY200910230528.html
 今月19日に医療従事者を対象に始まった新型の豚インフルエンザのワクチン接種について、厚生労働省は23日、追跡調査で、4人の重い副作用の報告があったと発表した。接種後に発熱や動悸(どうき)、意識低下などがあったが、接種との因果関係は不明だという。全員が回復するか症状が軽くなっており、厚労省は発生率の問題は別にして、副作用自体の重さについては「季節性インフルと同程度」としている。

(中略)

 重い副作用の4人のうち入院は3人。4人とも接種当日に嘔吐(おうと)や下半身の筋肉痛、動悸などが起きた。副作用が起きやすいとされるアレルギーの病歴があるのは1人だけ。
 一方、追跡調査対象ではないが、医療従事者の接種施設から、重い副作用2人、軽い副作用23人の計25人の報告があった。重い副作用は、急激に血圧が下がる「アナフィラキシーショック」や吐き気で、既に症状は軽くなった。

 インフルに詳しいけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫小児科部長は「健康な成人2万人に重い副作用4人は多い印象だ。断定的なことは言えないが、子どもや高齢者に接種を広げるにあたっては、副作用事例を十分観察する必要がある」と話している。

2009年10月23日金曜日

5-9歳、10-14歳の層に入院が多く、大人も脳症警戒を

厚生労働省の平成21 年10 月14 日から10 月20 日の入院サーベイランスの報告から。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2009/10/dl/infuh1021-01.pdf

年齢でみると、入院患者は計445人、うち5-9歳(181人)、10-14歳(109人)の層、そして1-5歳未満(84人)と目立ちます。

基礎疾患をもつ人は162人)。一概に言えるものではありませんが、慢性呼吸器疾患の患者さんが目立ちます。そして、脳症になった方に20~39歳 40~59歳の年齢層にも見られました。

妊婦さん・医師の皆さんへ

妊婦さん、もしくは医療関係者向けに日本産科婦人科学会から。ワクチン接種に関する事項が追加されています。

○10月22日付け妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ対応のQ&A改訂をお知らせ致します。 (今回改訂の要旨、一般の方向け/医療関係者向け)
 http://www.jsog.or.jp/index.html

10mL-バイアルの取り扱いについて、厚生労働省から。
○10mL-バイアル使用に係る留意事項(医師向け)
 http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/10/dl/info1020-01.pdf

2009年10月22日木曜日

「治癒証明書」は必要なし

ようやく文部科学省から通達が…。

早く浸透して、医療機関の負担を少しでも減らすことができますように…。

○各都道府県・指定都市教育委員会等宛 新型インフルエンザに関する対応について(第17報)
  http://www.mext.go.jp/a_menu/influtaisaku/syousai/1285989.htm

 厚生労働省事務連絡においては、「地域の事業者等に対し、インフルエンザの軽症患者であれば、解熱後2日を経過すれば外出の自粛を終了することが可能であると考えられており、従事者等の再出勤に先立って医療機関を受診させ治癒証明書を取得させる意義はないことについて、周知すること。また同様に、症状がないにもかかわらず、新型インフルエンザに感染していないことを証明するために、医療機関を受診させ簡易迅速検査やPCR検査を行う意義はないことについても、周知すること。」とされています。 ついては、これを踏まえ、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第19条の規定に基づく児童生徒等の出席停止を行った場合などでも再出席に先立って治癒証明書を取得させる意義はないと考えられますので、適切に対応くださるようお願いします。

2009年10月20日火曜日

決定事項は「健康な成人のみ接種1回」

現段階で決まっていることは、新型インフルエンザワクチン治験対象者そのままに、健康な成人のみが1回接種ということだけです。

今日明日中に政治的な判断が下されそうですが、少なくとも、
20歳以上の健康成人にしか治験をしていないなかで、
 → 13歳以上の健康な成人OK 
 → 妊婦さんOK
 → 基礎疾患をもった人OK
といった推論・仮説を積み重ねた不思議な結論は、この時点で先送りに…。

昨日午後9時から急遽専門家を入れ替えて行われた委員会の様子からはさまざまな問題が浮き彫りになってとても興味深いです。

メンバーは、16日にも出席していた田代眞人氏、尾身茂氏に加え、森澤雄司・自治医大病院感染制御部部長、森兼啓太・東北大大学院講師、岩田健太郎・神戸大大学院教授の3人が新たに加わりました。

○会議の詳録(随時更新途中ですが)ロハスメディカルから。
  http://lohasmedical.jp/news/2009/10/20010545.php

○19日の委員会に出席した神戸大学感染症専門の岩田教授のブログ
 http://georgebest1969.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-f939.html

新型インフルは国民の生命がかかていることに加えとても複雑なので報道の仕方がとても難しいかもしれませんが、あたかも「決定」として流されると混乱・反響が大きいですね。 流すほうの問題かもしれませんが…。

先日ご紹介した以下の記事も、まだ読みになっていなければあわせてご覧くださいね。

○新型インフル 「厚生労働省を信じてはいけない」 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/18001220.php

2009年10月19日月曜日

肺炎球菌ワクチン、再接種認める

海外と日本のワクチン行政には大きな違いがみられます。

ワクチンに関して海外で認められていることが日本では認められなかったり、また時間がかかったりとヘンなことが多かったんですが、ようやく欧米並みになりそうな兆しが見えてきました。

今回明らかになってきた動きはこれです。
日本では1生に1度しか接種できない肺炎球菌ワクチンですが、この接種も5年程度たてば再接種ができるようになるとのこと。

○肺炎球菌ワクチンの再接種認める…厚労省
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20091018-OYT1T00677.htm?from=main5

 厚生労働省は18日、肺炎の重症化を予防する肺炎球菌ワクチンについて、1回目の接種から5年程度経ていれば再接種を認めることを決めた。

 新型インフルエンザに感染した65歳以上の高齢者が重篤な肺炎を併発することを防ぐ効果も期待される。
 同ワクチンは従来、再接種すると強い副作用が出るとして、接種は一生に1度とされていた。だが、同ワクチンの効果は5年以上たつと低下する。海外などで4年以上の間隔を置けば、再接種は問題ないとの報告が出され、現在では欧米の多くの国で再接種が認められている。
 この日開かれた同省の薬事・食品衛生審議会安全対策調査会は、5年を目安に一定の間隔があれば、医師の判断で再接種を認めることで合意。同省はインフルエンザワクチンとの同時接種も認めた。

子どもの肺炎球菌ワクチンも承認されたことから、どちらの年齢層にも接種をすれば新型を含むインフルエンザによる重症者が減るのではと期待されるところです。

これまでは季節性インフルエンザに感染したことをきっかけとして肺炎などで亡くなることが多い高齢者層に接種されてきた肺炎球菌ワクチンですが、これにより新型インフルなどのハイリスク者である基礎疾患をもった方も積極的な接種がなされるようになるかもしれません。

そしてまた、季節性で亡くなることが多いもう一つの年齢層、小児の肺炎球菌ワクチンも承認の動き。これにより新型インフルにも大きな武器を備えることができるといえそうです。

○肺炎球菌:小児用ワクチン、国内販売を承認
 http://mainichi.jp/select/science/news/20091017ddm041040150000c.html

 厚生労働省は16日、小児用の肺炎球菌ワクチンの国内販売を承認した。肺炎球菌は子どもに重症の髄膜炎や肺炎などを起こす。国内では、来春までに小児科などで任意接種が受けられるようになる見通し。
 承認されたのはワイス(東京都品川区)が申請していた小児用肺炎球菌ワクチン「プレベナー」。日本の承認は98カ国目。
 肺炎球菌が原因の髄膜炎は年間約200人が発症する。病気の進行が早く、致死率は10%と言われている。接種対象は生後2カ月から9歳以下。接種時期は、生後2カ月以上~7カ月未満に始め、1歳3カ月までに計4回を標準としている。

一般的に、ワクチンを多くの人に接種することで、社会全体として感染の広がりを抑えたり、助かる人が多くなって、国にかかる医療費全体も安くなるといった効果が見込めることになります。

その一方で、ワクチンを接種により残念ながら副反応(副作用)が一定の割合で出ます。たとえば100万人に1人というようなごく稀でごく小さな割合ながら、重篤な後遺症が残るケースもあります。こうした補償をどうするか。社会全体として接種したのだから、万一重篤な副反応がみられた場合には社会全体として支えましょう、ということが求められます。

それが欧米ですでに行われている無過失補償制度(接種した医師・メーカーが責任をとることなく、十分な補償を行うという制度で、この補償を受ける場合には訴訟をしないということが条件に。ですが日本は訴訟の権利は万人に認められていますから、新型ではすぐに適用できなかった)です。

厚生労働省・足立政務官は、この制度を新型に間に合わせることができなかったが、これから出す特別法に「今後検討していく」という条文を盛り込むことを明言なさっていますので、まだ時間がかかるかもしれませんがこれも実施される方向に…。

日本は世界の流れに反するワクチン政策を行ってきたとずっと揶揄されてきましたが、民主党政権はこれに前向きなので、ようやく欧米並みのワクチン行政になるという嬉しい予感…。

ワクチンだけでなく海外で認められている未承認薬(抗がん剤等)も認められるようになるといいですね。

2009年10月18日日曜日

ワクチン1回かどうかは不透明に?

自治体によっては19日から医療関係者に向けて始まるとされるワクチン接種ですが、ワクチン1回でいいよ、という話が伝わり、接種の自治体等はこの時期にと困惑が広がっている様子です。

○1回接種、自治体は「寝耳に水」
http://sankei.jp.msn.com/life/body/091017/bdy0910172000004-n1.htm

報道が先走りましたが、実はまだ政務三役も了承しておらず、決定事項ではない様子。
まだこの決定までには紆余曲折もあるかもしれません。(これを決定した「専門家委員会」のメンバーの問題とその議論の過程に疑問符がつけられているため。足立政務官は、「科学者の端くれとして断じて許せない」と激怒したとも報道されていますし、確かに素人目に見てもおかしな部分が満載です)

○新型インフル ワクチン1回化は「科学の仮面かぶったデタラメ」
 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/17190448.php

(以下、世田谷区医師会講演会において上昌弘・東大医科研特任准教授の話から抜粋)

 「議論の判断材料になった臨床試験のデザインは非劣性試験といって、標準治療が存在する時に、効果は劣る代わりに別のメリットがあるような治療法をテストし、劣る効果と得られるメリットとを比較検討するためのもの。今回の場合、標準治療は2回打ち、効果は抗体価の上昇、メリットは接種人数が増えること、になる。だから、試験結果の正しい読み方は、2回打ちに比べて1回打ちは抗体価の上昇が10ポイントほど低いけれど、それを容認してでも接種人数を増やすべきか、ということになる。こんなのは学生でも半年ぐらい勉強すれば分かること。なぜこんな簡単なことを間違えるかと言えば、専門家会議と言いながらメンバーは素人だからだ」
 さらに「百歩譲ってメリットが上回ることを認めたとしても、20歳以上の人を対象にした試験で、なぜ13歳以上まで適用を広げられるのか。科学的には言えるはずがない。特に今回は中高生の罹患も重症化事例も多いことが知られていて、成人と様相が明らかに異なる。臨床試験の勉強をした人なら絶対にしないような合意をしてしまっている。この国は危険だ。素人が判断して、それを皆で拝んでいる」と述べた。
 同じく講演会で講師を務めた森澤雄司・自治医大感染制御部部長も「そもそも抗体価が上昇するからといって、ワクチンに効果があるとは限らない。また、海外のワクチンが1回で効果があると言っても、それと国産ワクチンとは全く別物。それぞれ独立に判断しなければならない。前提条件を3重にも4重にも間違えている。以前は確信犯的にやっていると思っていたのだけれど、最近は本当に知らないんじゃないかと思うようになった」と、講演会終了後の取材に対して語った。

 詳細には、次の記事。

○新型インフル 「厚生労働省を信じてはいけない」
 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/18001220.php

記事は少し長いですが、問題点が多数見えてきます。
なかでも、「新型と同じH1N1型である季節性Aソ連型に過去に感染した際に、新型に対しても基礎的な免疫を得ている可能性があるという推論の上に、13歳以上ならば同様に基礎的な免疫を得ているだろうという推論を二段階重ねて、この結論を導き出している」と指摘されていますが、この推論には専門家ならずとも疑問符がつくところです。

これまでのところ、中高生の間で流行したり重症化したりする例が目立っていることを考え合わせると、少なくともこの年齢層に対して2回接種をしないという決定はよくわかりませんね。

2009年10月16日金曜日

ワクチン接種、原則1回という案

接種は原則1回という方向性が示されました。

これが実施されれば、医療機関の負担も減りますし、ワクチンを接種できる人数も増えるといったことになりそうですね。

新型インフルワクチン、接種は原則1回=13歳未満、免疫不全者は2回
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000138-jij-soci

 厚生労働省が16日開いた新型インフルエンザワクチンについての意見交換会で、出席した専門家らは、国産ワクチンの接種回数を原則1回とする方針で合意した。同省は長妻昭厚労相に報告し、近く最終決定する。

 国産ワクチンの臨床試験で、1回の接種で十分な免疫が得られることが分かったため、2回接種の方針を改めた。これまでの計画より、国産ワクチンを打てる人が増える見通しとなった。 合意によると、1回接種となるのは医療従事者と1歳未満の乳児の保護者に加え、妊婦、中学・高校生、高齢者。 持病のある人も基本的に1回接種だが、白血病やエイズウイルス(HIV)感染などで免疫状態が悪化している人は、主治医の判断で2回接種もできる。1歳以上13歳未満の子どもは1回接種では十分な免疫が得られない可能性があり、原則的に2回接種とする。 

厚労省からのお知らせ

お待ちしておりました。
厚生労働省から、「念のため」あるいは「かかっていない証明」のために「簡易検査」や「陰性証明書」を求めないでほしいこと、救急外来の混乱を回避してほしいこと等が求められました。

あとは、10mLバイアルの現場での取説でしょうか~。

○新型で「念のため」の受診控えてと呼び掛け―厚労省政務官
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000009-cbn-soci

 厚生労働省の足立信也政務官は10月16日の記者会見で、新型インフルエンザ患者が特に多く報告されている5都道府県の担当者に実施した聞き取り調査で、感染していないか確認するため、簡易検査を受ける目的で受診するケースが多く見受けられるとして、こうした受診を自粛するよう呼び掛けた。

 調査は今週、北海道、東京、愛知、大阪、福岡の新型インフルエンザ対策の担当者を対象に実施し、医療提供体制に問題が起きていないかなどを聞いた。その結果、家族が新型インフルエンザにかかった場合、本人が感染していないことを証明する、いわゆる「陰性証明」を求めて受診するケースが見受けられたという。しかし、足立政務官は「医学的には本人が感染していないことを証明するのは困難」と述べ、企業などに陰性証明を求めることを自粛するよう呼び掛けた。

 また、三次救急医療機関を直接受診するケースも多く見受けられたとして、全国的に新型インフルエンザ患者が増加する中、「救急外来が混雑することで、他の救急患者さんへの対応が手薄になったり、遅れたりする可能性がある」と強調し、かかりつけ医と発熱時の対応についてあらかじめ相談することなどを求めた。

ワクチンの有効性ほか

 まずは朗報から。

国産ワクチン、1回の接種で効果 厚労省
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000050-mai-soci

 厚生労働省は16日、新型インフルエンザの国産ワクチンについて、「1回の接種で効果的な免疫反応が期待できる」とする治験結果を公表した。新型インフルエンザは大半の人が免疫を持たないため、これまで2回接種を前提にしていた。だが、1回接種で十分になった場合、接種人数が増える可能性がある。

 治験は北里研究所が製造したワクチンについて9月17日から健康な成人200人に対して実施。通常量(15マイクログラム)を皮下注射した結果、血液中で免疫として働く抗体の量が4倍以上上昇するなど、ワクチンの有効性を示す基準を満たした人が96人中72人(75%)で、ワクチンとして有効と評価される国際基準の40%を上回った。また倍の量(30マイクログラム)を接種した98人では86人(87.8%)に上った。

 ワクチンを接種した後の副作用は45.9%の人にあり、接種個所が赤く腫れたりする頻度が高かった。比較的重い副作用として急なアレルギーショックなどもあったという。
 新型インフルエンザのワクチン接種回数を巡っては米厚生省も9月、成人に対する臨床試験結果から、1回の接種で十分な免疫効果を得られたと発表していた。

 ワクチンの効果については、朗報ですね。
 副反応に関しても報告がありますが、ちなみに、8/20、8/27新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会の資料「予防接種後副反応報告書集計報告」によると、インフルエンザでは、ワクチン接種者数13,064,354人に対して、副反応報告症例数25。頻度は、10,000人当たり、0.01913です。

 ワクチンについてより詳しい内容は、厚生労働省HPを参照のこと。
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_vaccine.html

 そして、5月から専門家がずっと指摘してきましたが、早くも医療機関パンクの予兆が。

新型インフル:患者殺到続けば危険 愛知県病院協会が声明
 http://mainichi.jp/select/science/news/20091016k0000e040073000c.html
 


 新型インフルエンザの拡大が続く中、重症緊急患者を受け入れる3次緊急病院にインフルエンザを疑う受診者が土日祝日に殺到していることが分かった。愛知県病院協会が15日明らかにしたもので、稲垣春夫会長(トヨタ記念病院院長)は「現場はパンク状態。患者の殺到が続けば、事故が起きる心配もあり、冷静な対応をお願いしたい」などとする緊急アピールを発表した。

 同協会などによると、名古屋第2赤十字病院(名古屋市昭和区)では、今月10~12日の3連休、インフルエンザではないかと訴える受診者が平日の4~9倍にあたる約130~280人訪れた。また、名古屋掖済会病院(同市中川区)でも、小児科で通常の土日祝日の4倍に上る受診者が訪れ、診察まで4時間待ちだったという。土日祝日に開業医が休みになるのが原因とみられ、病院では医師を増員するなどして対応に追われているという。

 そうしたことを受けて、厚生労働省から、呼びかけ。

国産ワクチン1回で効果 新型インフル臨床報告
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000075-san-soci

(一部抜粋)

安易な受診やめて
 厚生労働省の足立信也政務官は16日の記者会見で、11日までの1週間に全国約5千の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が1機関当たり12・92人と、前週の6・40人から倍増し、流行が急速に拡大していることを明らかにした。
 その上で足立政務官は「念のための受診も多く、重症者への対応が遅れる可能性が出ている」として、安易な受診を控えるよう注意を呼び掛けた。

 医療施設のパンクについては、5月来専門家がずっと指摘してきたところですが、ワクチン接種の混乱も相まって地域の医療体制は整っていないところが多いようです。
 自治体もいまワクチン接種について医療機関と調整中でてんやわんやなので、できれば「ワクチンはいつから」といった質問電話は少し控えていただいて、もうしばらく自治体からの発表を待っていただきたいところです。

 一方で、治療を受ける必要があるかどうか等、徐々に自治体等の相談窓口の充実を図っていってほしいところ…。

2009年10月13日火曜日

ワクチンまとめ

ワクチンに関する記事からです。

○新型インフルワクチン接種 「過信は禁物」
 http://www.oita-press.co.jp/localNews/2009_125541224395.html

○【感染症と人の戦い】国立感染症研究所情報センター長・岡部信彦   
  http://sankei.jp.msn.com/life/body/090926/bdy0909260406000-n1.htm

○ワクチン効果、限界も 大流行に備えて
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/swine/list/200910/CK2009100502000108.html
国産の新型インフルワクチンは、季節性のインフルエンザと「同等の安全性」といわれているので昨年度の副作用をチェック。
○季節性インフル、121人に副作用の疑い=昨年度のワクチン接種-厚労省
  http://www.jiji.com/jc/zc?k=200909/2009092900975

ということで、 ごく簡単にですがまとめです。

インフルエンザワクチンは重症化・肺炎・死亡のリスクを下げるとともに大きな流行を抑えることに有効です。

新型インフルエンザは、感染しても大多数の人が軽症ですが、ごくごく少数ながら健康な人でも重症化・死亡する例がみられることから、ワクチンの接種は個人と社会的機能を守る予防策のひとつとして大いに期待されています。

しかし、接種には、異物を体内に入れることから多かれ少なかれ副反応がつきものです。新型インフルエンザの国産のワクチンは季節性インフルエンザのワクチンと同じ製法で作られていることから、新型のワクチンは季節性と同等の安全性をもつと考えられていますが、「同等の安全性」とは「まったく副反応が起きない」ということではなく、ごくごくまれながら重篤な副反応も見られることもあります。

また、ワクチンを接種しても、絶対に感染しないというわけではありません。

最終的には、皆さん一人ひとりが新型インフルエンザに感染した場合に重症化するリスクと、ワクチンの有効性・安全性を考慮して接種するかどうかを決めることが求められています(基礎疾患をお持ちの方は、ご自身の状態が免疫力が低下した状態かどうか、コントロールされている状態か等、かかりつけ医にうかがってご相談なさるとよいと思います)。

こうしたことに加えワクチンが国内に十分に行き渡らなかったり、流行ピーク時に間に合わない可能性がある今、新型インフルエンザの予防においてワクチンは唯一の切り札ではなく、一人ひとりの予防と早期発見・早期治療が最も重要と考えられています。

2009年10月7日水曜日

不安はつきぬ…

今度はこんな記事。
…と言われても、親御さんはやっぱり悩みますよね。

それと、地域の小児科医がこうした接種方法をしてくださるかどうか。
プリントアウトして、予めかかりつけ医に相談しておくとよいかもしれません。

卵アレルギー児にもインフルワクチン接種を推奨-都講演会で小児科医

 東京都と独立行政法人環境再生保全機構は10月5日、子どものぜんそくや食物アレルギーの正しい知識と対応法に関する講演会を開き、東京慈恵会医科大附属第三病院小児科の田知本寛医師が自らの診療経験などを基に講演、また参加者の質問に応じた。卵アレルギーを持つ3歳児の親から、鶏卵を使って生産する新型インフルエンザワクチンの接種後の副反応を不安がる声があり、田知本氏はワクチンが少量であることを説明し、「基本的には、ワクチンはすべてやる方向です。卵アレルギーがあっても。だからインフルエンザワクチンもやるべきだと思う」と、接種を推奨した。

 講演会には、アレルギーを持つ子どもの保護者や看護師、保育士など約250人が参加。

 田知本氏は、アトピー性皮膚炎の子どもの入浴について「手で洗えば傷にならない」とし、顔も体もよく泡立てた石鹸を用い、「手でごしごし洗って構わない」と述べるなど、日常生活での対応法や、アレルギー状況を知る上での食物日記の重要性などを解説した。 講演後に行われた質疑応答では、田知本氏が推奨した入浴法について、保育園勤務の女性が「石鹸を使った入浴でよくない場合もあるのか」と質問した。これに対し田知本氏は、「皮膚科のアトピー性皮膚炎の治療ガイドラインでも、洗うことが基本になっている」と指摘。「よくないパターンはあまり考えにくい」と答えた。 また、新型インフルエンザに関する不安の声も参加者から上がり、季節の変わり目にぜんそくの症状がひどくなるという4歳の息子の保護者は、「ぜんそくの子はインフルエンザにかかるととても危険」との報道を挙げ、対処法を尋ねた。 田知本氏は「治療を普段からちゃんとしている子は、悪くなりにくいのではないか」とし、普段から治療をきちんと受ける重要性を強調した。

 別の保護者は、卵などの食物アレルギーを持つ子への、鶏卵を使って製造するワクチンの接種への不安を訴えた。田知本氏はワクチン接種の推奨の方向性を示した上で、副反応に備えワクチンを分割して接種する方法を紹介。それによると、一回0.2ccを2回接種する場合は、まず0.05ccを1回打ち、腫れてこなければ残量を打つ。それで大丈夫なら、2回目接種では一回で0.2㏄を打つ。

 また、副反応が不安なので接種回数は「2回となっているが、1回でもいいのか」という質問には、「ブースター効果といって、抗体をたくさん作らせるためなので、規定された量(2回)は打った方がよい」と述べた。

大型台風接近中

<台風18号>東海地方「伊勢湾台風と同じコース」に警戒感  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091007-00000060-mai-soci


 台風18号は、8日明け方から昼前にかけて東海地方に最接近する可能性が高まった。名古屋地方気象台は7日午前、愛知県庁で説明会を開き「1959年の伊勢湾台風とほぼ同じコースで東海地方にとって最悪のコースとなる恐れが高まった」と指摘。風についても「過去10年で最大になる恐れがある」と7日中に対策を済ませるよう呼び掛けた。

********
 残念ながら半端なく規模が大きく、直撃になりそうですね。地域によっては、年間雨量の半分(600ミリ+300ミリ等)ほどが降るのではと予想されています。

 とはいえ、突然の集中豪雨ではなく台風ということで予測が可能ですから、早め早めの行動を心がけてください。

<危険回避のための避難>

  • 土砂災害の可能性がある家では、台風が来る前に安全な場所に避難を。
  • 河川が決壊する危険性のある場所に家がある場合には、台風が来る前に安全な場所に避難を。(一戸建てでも流される場合があります)
  • 水(雨水が50ミリ/時間を超えると一時的に流れていかなくなったり川や水路から水が溢れる)による水害が心配される場合には、2階がある場合には2階、あるいはそれ以上の高台に移動するといった避難方法もご検討ください。
<避難の注意点>

  • 夜間・道路冠水後・台風ピーク時の避難は、非常に危険です。避難が必要な場合には、できるだけそうした状態になる前に避難を済ませましょう(避難所までの行程や、田畑を見に行って被害に合うことが多くみられます)。
  • 冠水時、どうしても外に出る場合には、マンホールがはずれているといったことが考えられますので、傘などで足元を確認しながら、ゆっくり進みましょう。なお、靴は長靴ではなく短靴にしましょう。ちなみに、子どもは30センチの深さでも、歩くのが困難です。大人でも、水がひざ上にまでくるとなんとか歩けるものの、思わずバランスを崩したり危ない場合があるので注意が必要です(風や流れがあれば、ここまでの水深でなくても危険です)。
  • 何が何でも避難所へ、ということはありません。避難経路が低地になっていたり、川が溢れていることがありますのでその場合には、近くの頑丈な建物の高い階に避難するといったこともお考えください。
  • 残念ながら、市区町村から避難勧告や指示が適切に出るとは限りません。避難勧告を出すタイミングというのはとても難しく、矢継ぎ早に情報が入ってきて、対応できない場合もあります(もちろん精一杯ご努力なさっていると承知しておりますが…)。基本は、浸水・土砂災害の危険がある地域では、避難勧告が出なくても、自主避難が求められます。
    また、急な河川の増水があったり、地元ならではの土砂災害の前兆を感知するといったことも考えられるので、情報に頼りすぎないようにしておくことも重要です。
<その他>

  • 風が弱くなっていても、雨が降っていたら川が氾濫する危険があります。
  • 雨がやんでも、土砂災害の危険があります。
  • 都市部の浸水が心配される地域では、できるだけ地下を避けるようにしましょう。
  • 自家用車は、ガード下などの水溜りに入り死者が出る例も目立ちます。マフラーから浸水したらエンジンが切れパワーウインドウも開かなくなります。窓ガラスを割る道具を車に積んでおいたり、できるだけ車での移動は避けたほうがよいでしょう。
  • 地下室は、30センチの深さでドアが開かなくなります。
  • 浸水が考えられるようであれば、予め土のうの準備、飛ぶ可能性があるものを固定する、雨水ますに枯れ葉がたまっていないか等、確認しておきましょう。
 天気情報は常に最新のものを入手する必要がありますが、雨が突然強くなることもあります。とにかく、今回は大型台風ということに留意して、早め早めにご対処ください。 (できれば、どんな立地に家があるか、市区町村で発行している「ハザードマップ」や都道府県で確認できる「土砂災害危険箇所マップ」といったもので調べて自分の危険度をチェックしておいてください。「防災マップ」に避難所とともに掲載しているところもあります)

2009年10月5日月曜日

10mlバイアルへの不安

一番安全なワクチン予防接種は、一人ずつパックされた注射器に充填されたワクチンを、一人ずつに接種していくこと。今回、妊婦さんへの接種に対してはこうしたワクチンが使われることになりそうですが、それ以外は、もしかすると、10mLバイアル(小瓶)という容器に入ったワクチンが使われることがほぼ確実になってきました。

ふつう、インフルエンザワクチンは 0.5 mL を皮下注射します。1つのバイアルで、理論上は20人接種できることになります。小児では、もう少し量が少なくなるので、もっと多い人数に接種が可能になります。

医師が接種をする作業までを追ってみると、少なくとも

  • バイアルを手で開ける
  • 注射器の袋を開ける
  • 容器の栓およびその周囲をアルコールで消毒
  • バイアルに注射器を刺す
  • 所要量を注射器内に吸引空気
  • 接種
といった流れになります。もちろん、感染症が心配されますから、注射針および注射筒は、被接種者ごとに取り換える必要等がありますし、一人に接種したのち、次の接種者までに時間が空けば、そのバイアルは冷蔵庫で適切に保存される必要があります(余ったらその日のうちに廃棄)。

これを、1バイアルで20回(20人)繰り返すことを想像するだけで、思わず目の前がくらくらしてしまうほどの大変な状態です。

森澤雄司 自治医科大学附属病院・感染制御部長は、ヒューマンエラー等がゼロになるとは言い切れず、また雑菌の混入・繁殖等も心配されことから、「今回のワクチンは数千万人に接種するという話であり、エラーが生じる可能性は数万回に 1 回であっても許容しづらい」とし、「執拗いがそのような事態に陥っているのが残念至極」とし、「現実的な医療安全の考え方で言えば、次に考えられる対策は、被接種者が当事者意識をもって関与してもらうことであり、内心忸怩たるものがあるが、「その針は清潔で安全ですか?」と接種を受ける際に本人から確認していただく必要があるかもしれない」と指摘されています。

新型インフルエンザワクチンに思うこと -10 mL-バイアルなんてウソでしょ~!- 
 森澤雄司 自治医科大学附属病院・感染制御部長/MRIC by 医療ガバナンス学会

診療所で新型インフルのワクチンが接種されることになれば、さまざまな患者のなかにワクチン接種者がいるわけなので、より煩雑になることから、一層リスクが高まります。
森澤先生は、さらに「ちなみに新型インフルエンザワクチン接種は保健所や保健センターだけでなく、一般医療機関でも実施される方針である。そのような場合に 10-mL バイアルが使用されるようであれば、予約した方々には必ず時間を守っていただきたい。予定の人数が揃わないためにバイアルの中の残液が廃棄されるような事態になれば、数を揃えるための苦肉の策である 10-mL バイアルが本末転倒に足を引っ張る理由にもなりかねない」と述べられています。

2009年10月3日土曜日

新型にも肺炎球菌ワクチンは有効

 季節性インフルエンザに感染することをきっかけとして、主に高齢者が肺炎でなくなるケースが多くみられます(高齢者の肺炎の原因となる病原体のなかで、「肺炎球菌」は最も頻度が高くなっていることから、肺炎球菌ワクチン接種が奨められてきました(ただし、季節性インフルエンザによる肺炎のすべてを防ぐものではありません)。

 新型インフルエンザは、感染したウイルスが直接悪さをして、50歳代以下の若い世代が亡くなるケースが目立っていましたが、下の記事によると、肺炎球菌による死因も見られるとのこと。

 新型インフルエンザ対策としても、肺炎球菌ワクチンが有効であるケースも多い、ということになります。朗報ですね。

○新型インフル死者の3割、細菌に同時感染

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091002-00000885-yom-sci

 新型インフルエンザの死者の約3割が細菌に同時感染していたとの調査結果を米疾病対策センター(CDC)が1日の週報で発表した。
 5月~8月に新型インフルで死亡した77人から組織を採取して検査したところ、22人が肺炎球菌などの細菌にも感染していた。
 肺炎球菌は、免疫力が落ちると増殖して、肺炎を引き起こし、患者が死亡する一因となる。
 CDCは「細菌は検出が難しいため、見逃されている可能性がある」と指摘、同時感染が疑われる場合は抗生物質による治療を検討するよう勧めている。

 現在、医療機関では、肺炎球菌ワクチンが売り切れ状態ですが、予定では10月中旬以降から徐々に出回るとのこと。

 自治体によっては補助も始まっていますので、問い合わせてみるといいですね。

2009年9月30日水曜日

ワクチンの接種場所

インフルエンザ・シーズンのピーク時、極力医療機関の負担を減らす努力が必要になります。

近々でいうと、新型インフルエンザのワクチン接種は現状では医療機関で行うといった方向性のようですが、専門家から聞かれるのは、接種は発熱患者が来ない保健所や保健センターで行うべき、という声です。

これにはいくつか理由があります。

1つに、まもなく医療機関においては定期接種の時期に入るということです。
インフルエンザシーズンに入って患者が医療機関に多く押し寄せることが想定されていますが、定期接種に加えてさらに新型インフルエンザのワクチン接種をしなくてはならないことをすでに憂慮している小児科医等がみられます。

一般にインフルエンザ様症状の患者さんの診断・治療のため、国はインフルエンザの患者と慢性疾患等の一般の患者の動線を分ける(これもなかなか難しいですが)としています。ワクチン接種を一般の医療機関で行うことになれば、さらに健康な(しかし見かけは発症していないだけかもしれない)人が加わることになります。

とすると、ここに新たなリスクが生まれます。健康な人は、新型インフルのワクチン接種をしに行って、新型をもらってきてしまうリスクがありますし、3グループに分けない限り、一般の患者にもその感染リスクが増すことになります。

そして、現在厚生労働省がワクチンの一部を「1mlバイアルを10mlバイアルに変更する」として言い出していることも、別のリスクを生む可能性があります。

東北大大学院大学院医学系研究科感染制御・検査診断学の森兼啓太講師は、10mlバイアルを使うと1本の瓶に20回穿刺することになり、微生物による汚染の機会が増す」とそのリスクを主張なさっています。

○「本当に接種できるのか?課題山積の新型インフルエンザワクチン」/森兼啓太
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-238.html

こうしたワクチン接種時の安全性は、この時代においては当然担保される必要があります。

もしこのまま厚生労働省のすすめる10mlバイアルが流通するようになるなら、どこで接種をすべきか、またどういった体制をとれば、このリスクを最小にすることができるのかといったことを十分に検討する必要があります。

そうしないと、場合によってはこうした別のリスクを負ってまで、接種する必要性があるほど高い病原性をもつ感染症なのかという本来ある議論にまで戻らざるを得なくなるように思います。

2009年9月29日火曜日

医療従事者の、医療従事者による、国民のための新型インフルエンザ対策

MRIC by 医療ガバナンス学会から。
森兼啓太 東北大学大学院医学系研究科 感染制御・検査診断学分野 講師
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-265.html

この中にも書いてありますが、WHOではなぜ日本は致死率が低いのか、また小さな流行がみられたとき(神戸・大阪等)、なぜ感染が抑えられたのかがよく議論になっていると聞いています。

致死率が低い理由としては、医療機関へのアクセスがよく、すぐに治療してもらえる、そしてこれまでの季節性インフルエンザでも、タミフルやりレンザを多く使用してきたこと、そして学校で見られるような集団の手洗いの習慣等が挙げられます。

よく、災害時には「ふだんしていることしかできない」と言われますけど、もしかすると幸運にも、日本はインフルエンザ対応に最も適応してきた国と言ってよいのかもしれませんね。

と、考えてみると「発熱外来」は、誰にとっても「ふだんしてきたこと」ではありません。
現在、厚生労働省は一度診察した等の条件付ながらファックスで、「タミフル投与」をするといった処方をしてもよい、としていますが、これも「ふだんしてきたこと」ではありません。

イギリスでは、フル・フレンドといって、電話でインフルかどうかを判断(医師ではない人が行う)をし、予め決められたその患者の友達が薬を受け取りに行って届ける(接触せずにポストに入れる)といったシステムが導入されています。
しかし、発熱=インフルエンザではないですし、これにとらわれていると大きな疾患を見落とすことが心配されています。たくさんの病気がありますもんね。

実際、イギリスのフル・フレンド制度でも、日本で行われた5,6月に行われた発熱外来でもそうしたケースが指摘されていました。
よって、ふだんの診療の延長で自治体と医師会がタッグを組んで頑張る「仙台方式」が全国でもっとも注目されました(自分の子どもが熱を出したとしても、発熱外来には行きにくいですもんね)。

新型インフルエンザ対策・診療も、できるだけ、ふだんしていることの延長でとらえるべきでしょうし、そうするために、行政は地域の医療機関を精一杯(財政面も含めて)フォローしていただきたいところです。

2009年9月24日木曜日

高校生くらいまでは脳症に注意

気になるニュースから。

○新型インフル:7歳以上で脳症多発 日本小児科学会で報告
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090924k0000m040079000c.html


 東京都内で23日に開かれた日本小児科学会の新型インフルエンザ緊急フォーラムで、季節性に比べ年齢の高い小児の脳症が多く発生していることが報告された。同学会は学会内に対策室を設け、重症例の把握に乗り出す。
 同学会によると、季節性インフルエンザの場合、脳症は2~4歳に多い。しかし、23日までに判明した新型インフルエンザでは、小児の脳症20例のうち、患者が最も多いのは7歳で、10歳以上も約4分の1を占めた。脳症患者の約2割に、ぜんそくの持病があった。

インフルエンザ脳症は、脳症は、初めてインフルエンザにかかった場合に心配される合併症です。通常季節性インフルエンザでは主に6歳以下の小さな子どもが発症し、インフルエンザの発熱から数時間から1日と神経症状が出るまでの期間が短いのが特徴です。

菅谷憲夫 神奈川県警友会けいゆう病院 小児科部長は、「今回の新型では、誰もが免疫がないため小中学生をふくめた広い年齢層のお子さんの保護者は、十分に注意して見守るようにしてください」とし、「タミフル・リレンザを投与していたからといって脳症が起こらないとは言えません」とおっしゃっています。

それを裏付けるように、9月24日、中学生が脳症という記事がありました。

○新型インフルで男子中学生が急性脳症
 http://www.wbs.co.jp/news.html?p=4469

和歌山市内の中学校に通う12歳の男子中学生が、インフルエンザにかかり、意識障害や異常行動などが見られたことから、「インフルエンザ脳症」と診断されました。県内で「インフルエンザ脳症」と診断されたのは初めてです。この男子中学生は現在症状は安定し、病院で手当てを受けています。

和歌山市保健所によりますと、県内で初めてインフルエンザ脳症と診断されたのは、和歌山市内の中学校に通う12歳の中学1年生の男子です。この男子中学生は、おととい(22日)発熱があり、市内の医療機関で受診したところインフルエンザ簡易検査でA型の陽性反応が出たため、リレンザを投与して帰宅しました。しかしきのう(23日)朝、41度の発熱があり、呼びかけに応えないなどの意識障害や奇声を上げるなどの異常行動が認められたため、救急車で医療機関を受診し、インフルエンザ脳症と診断され入院したということです。そしてきょう(24日)、和歌山市衛生研究所でPCR検査を行ったところ新型インフルエンザの感染が確認されました。現在この男子中学生の症状は安定していて、病院で手当てを受けているということです。和歌山市教育委員会では、連休前に各学校にインフルエンザの予防について通知を出しましたが、今回の脳症の発生を受けて、あらためて手洗いやうがいなど予防の徹底を呼びかけるとともに、運動会など行事も多くなるので無理な開催をしないよう呼びかけることにしています。

そして、高校生も。
○高1女子がインフル脳症
 http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/chiba/090919/chb0909191817005-n1.htm

 県は19日、八千代市に住む高校1年の女子生徒(15)が新型インフルエンザに感染し、急性脳症と診断されたと発表した。容体は安定に向かっている。
 県によると17日に40度の発熱があり、翌日から入院して治療を受けていた。鎮静剤の影響があるため人工呼吸器を付けた状態だが、熱は37度台まで下がったという。
では、どんな症状に注意をするとよいのでしょう。

日本小児科学会は、インフルエンザ脳症の早期の症状は、保護者等一般の方が注意すべき点で、これらの症状がみられたら医療機関(小児科であることが望ましい)を受診すること:

インフルエンザ様症状(発熱、気道症状)に加え、

 A.呼びかけに答えない」など意識レベルの低下がみられる
  (「私は誰?」「いま昼?夜?」「ここはどこ?」などと問いかけてみましょう)
 B.痙攣重積および痙攣後の意識障害が持続する
 C.意味不明の言動がみられる

としています。

脳症だけでなく、異常行動(タミフル等を投与されていなくても高熱から起きる可能性もある)からお子さんを守るためにも、最初の1~2日あるいは高熱が下がるまでは、保護者の方は通常より、お子さんの様子をよ~~く見守るようにしましょう。

日本小児科学会 / 新型インフルエンザ
 http://www.jpeds.or.jp/influenza-j.html

2009年9月23日水曜日

肺炎予防推進プロジェクト

季節性・新型問わず、インフルエンザに感染することがきっかけとなって肺炎を起こして亡くなる方が多くいらっしゃいます。

ということで、「肺炎予防推進プロジェクト」というウェブサイトが公開になりました。
 http://www.haienyobo.com/


◇ 肺炎予防5カ条

  1. インフルエンザや風邪にかからないように注意する。
  2. 外から戻ってきた時には、うがい、手洗いを心がける。
  3. 天気の良い日には外に出て、日光浴、散歩など適度な運動をする。
  4. 歯をみがくときには、歯ぐきもみがく。
  5. 高齢者の場合、肺炎球菌ワクチンの摂取を検討する。
肺炎球菌ワクチン(いま売り切れとのことですが)の接種も勧めています。

ちなみに、もともと口腔内(口の中)は、雑菌で一杯。
感染症等を防ぐ場合、4にある口の中をきれいにしておくということはとても大事で、うがいをする時も口の中をぶくぶくしてから喉(のど)をぶくぶくすることがのぞましいとされています。
また、うがい薬より水でうがいをするほうが効果があるという研究結果があります。

2009年9月20日日曜日

基礎疾患を持った方、妊婦さんへ

 学会等から、患者さんに向けて、頻繁に提言が出されています。こうしたことは画期的ですね。皆さんも参考になさってください。

その他、

なお、基礎疾患をお持ちの方で薬がいつも同じで状態がコントロールされている場合は、かかりつけ医と相談のうえ薬をいつもより長期間分もらうようにしたり、少し多めに食料を買うなど、外出や診療・人込みに入る機会をなるべく減らすといったことが推奨されています。

この秋冬をみんなでよく寝てよく食べ、健康に乗り切りましょう~。

2009年9月19日土曜日

悪化し始めていたら48時間以内にタミフル

○短時間で子供が呼吸困難に 特異な症例相次ぐ  http://sankei.jp.msn.com/life/body/090912/bdy0909122117005-n1.htm

○軽症も、タミフル早期投与を…感染症学会   http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/influenza/if90916c.htm?from=tokusyu

提言はこちら。
○日本感染症学会トップページ
 http://www.kansensho.or.jp/

○新型インフルの小6死亡  http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090918-OYT8T00247.htm

○新型インフル、感染確定前でも治療薬…厚労省通知  http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090919-OYT8T00308.htm?from=yoltop

 新型インフルエンザに感染して死亡した横浜市の小学6年の男子児童(12)がタミフルなどの治療薬を投与されていなかったことを受け、厚生労働省は18日、感染の疑いがある患者については、感染が確定していなくても医師の判断でタミフル等の治療薬を投与できることを改めて周知する通知を都道府県などに出した。
 横浜市などによると、男児は2日午前、高熱を出して医療機関を受診、簡易検査を受けたが陰性だった。この医療機関ではタミフルなどの投与を受けず、翌日に容体が悪化して入院した。

 日本感染症学会の「可能な限り全例に対する発病早期からの抗インフルエンザ薬による治療開始が最も重要であると言えます」という提言はとても画期的で重く尊重すべきで、けいゆう病院の菅谷憲夫先生も再三、インフルエンザと疑われる場合には直ちにタミフル投与を、とされています。

たとえば基礎疾患がない健康な小児が重症肺炎を合併した症例。
○IASR/<速報>急速に呼吸障害が進行した小児のパンデミック(H1N1)2009による重症肺炎症例
 http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3562.html

 そして、WHO(8月21日)は「受診時にすでに重症な状態、あるいは状況が悪化し始める患者が現れたら、なるべく早くオセルタミビルで治療を開始することをWHOは推奨する。早期、特に症状出現後48時間以内に治療を開始することと、良好な治療成績は非常に強い関連があることを研究結果が示している。重症、あるいは症状が悪化している患者に対しては、たとえ開始時期が遅くなっても治療を行なうべきである。オセルタミビルがない、あるいは何らかの理由で使用できない場合はザナミビルを投与することも可能である」としています。

○WHO/推奨された抗ウイルス薬の使用(国立感染症研究所訳)
 http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009who/WHO_antivirals.html

 一方で、患者が多くでる時期に薬不足が起こるのではと心配する声、耐性誘導の心配等が聞かれます。
 感染したとしても、その多くは軽症であることは間違いありません。「驚くほどみな軽症」と話している開業医もいらっしゃるほどですが、ごくごく一部には健康な人に重症者・死亡者が出るという特異なインフルエンザ・ウイルス。 大丈夫な人とそうでない人の差がどこにあるのかつかめていません。

一般の方への啓発とともに治療も、本当に難しいですね。

産科開業医に迫る危機!

少し前から訴えられてきたことですが、もう待ったなしの状況になりました。


○産科開業医に資金繰りの危機 福祉医療機構に上納の構図
 http://lohasmedical.jp/news/2009/09/01125225.php

 10月から出産育児一時金が健康保険組合から医療機関へ直接支払われるようになる。医療機関の未収金に配慮した政策だったが、窓口払いから保険支払いへと変わることにより、分娩の2~3ヵ月後まで医療機関の収入がほとんどなくなる。このため、開業医の多くから資金ショートするとの悲鳴が上がっている。その間の資金繰りを支援すると称して、厚生労働省の外郭団体が有利子での融資を準備しているが、一度借りると引退まで借金を背負い続けることになる例が多いとみられる。

 これまでは本人から退院時に徴収していた。支払いなしに産み逃げされて医療機関の困る事例が相次いだため、分娩費に充てる想定で支払われている出産育児一時金を10月から医療機関が直接受け取れるようにした。しかし、この支払い処理が通常の保険支払いと同じに行われるため、入金は2~3ヵ月後になる。月に25分娩扱う診療所であれば、月1050万円×3の3000万円程度の資金ショートが生じる計算になる。開業費用の借金を返しながら診療を続けている開業医は、手元資金にそれほど余裕はないのが普通なので重大な問題だ。

 この資金繰りを支援するための融資制度も厚生労働省の外郭団体である独立行政法人・福祉医療機構で同時に創設された。しかし、有利子(1.6%)で要保証人ということから、開業医たちの不満が爆発寸前になっている。少し考えていただくと分かるが、開業医側には何の瑕疵もないのに借金の必要な状態に追い込まれたうえで、分娩取り扱いを続ける限り1.6%の年貢を機構に納め続けねばならない構図になっている。

 たとえば、愛知県内にある産科施設の35パーセントが直接払い導入に当たって「融資の必要あり」と回答しており、開業医の1割以上が廃業も考慮しているとのことで、もう待ったなしの状態とのこと。

 ということで、要望書です。一人でも多くの方に署名をとしていますので、詳しくは下記の頁をご覧ください。

○出産育児一時金 日本のお産を守る会が要望書掲示
 http://lohasmedical.jp/news/2009/09/19071951.php

それにしても、なんと理不尽なことでしょう。
ただでさえ産科不足の折にこの仕打ち。

2009年9月18日金曜日

危険な兆候

新型インフルエンザはかかってもほとんどが軽症で、自宅で安静にしている人も多いことでしょうね。

とはいえ、大人も子どもさんも、療養中に次のような兆候がみられたら直ちに診療にかかるようにと推奨されています。

○子供の場合
  • インフルエンザ様症状改善後の再発熱や咳の悪化
  • 激しい、持続性の嘔吐
  • 頻呼吸や呼吸困難
  • 蒼白、チアノーゼ
  • 水分摂取不良
  • 意識あるいは意思疎通不良
  • 機嫌が悪く、抱っこされることを嫌がる
○大人の場合
  • インフルエンザ様症状改善後の再発熱や咳の悪化
  • 激しい、持続性の嘔吐
  • 胸部や腹部の痛みや圧迫感
  • 突然のめまい
  • 混迷

2009年9月17日木曜日

治癒証明書 → そんなものはありません

治癒証明書、陰性証明書、診断書など、数々の証明をもってくるようにとする企業・学校等があるという報道がありました。

○新型インフル「陰性証明」求め無用受診殺到
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090915-00000615-yom-soci
新型インフルエンザの流行が広がる中、「感染していない」証明のために簡易検査を求める人の受診が相次ぎ、医療現場で混乱を招いている。 幼稚園や保育園、学校、会社などが、感染の拡大を恐れ、検査を受けるよう求めるためとみられるが、医師らは「少しの発熱で受診して、医療機関で逆に感染したり、重症者の治療が遅れたりする危険もある」として、無用な検査受診をしないよう訴えている。


そもそも新型インフルエンザにおいて、
  • 医療機関で行われる簡易検査の感度は10~70パーセント(CDC(米疾病対策センター))。陰性でも、かかっていないという証明にはならない。
  • 診断を確定するには、PCR検査(遺伝子レベルの検査)をしなければならないが、現在一般診療では行われていない。
  • 新型インフルエンザの場合、「発症後1週間、または解熱後2日を過ぎれば、他人に感染させる可能性はなくなる」とされていますので、治癒証明書は必要ない。

こうしたことが十分に浸透していないようです。

沖縄県立中部病院からのリリース
○インフルエンザと診断された患者さんとご家族へ完治証明書および診断書の発行について
 http://www.hosp.pref.okinawa.jp/chubu/influenza/20090826.html

ただでさえ患者殺到のなか病院の負担を少しでも減らすことが大切ですし、かかっていない人が陰性証明書をもらいに病院に行けば、そこで「もらってきてしまう」恐れが出てきます。

どの自治体でもこうした呼びかけを住民になさったほうがよさそうですね。
(本当は国がやるべきかな?)

2009年9月15日火曜日

怖いの? 怖くないの?

新型インフルエンザは怖いんだぞぅ~、というガイダンスが多いですが、日本の人口の20パーセントが発病したとして、入院は1.5パーセント、死亡するのではと考えられているのは0.03パーセントです。

つまり、全国民の98.7パーセントの人は入院しないですし、99.97パーセントは死亡しないということになります。

季節性インフルエンザより感染性は高い(「新型」なのでほとんどの人に免疫がないため)とされていますが、重症化するのはごく一部、さらに残念ながら亡くなるのもそのごくごく一部といえます。

とはいえ、

  • その重症化・死亡する方があなたの身近に出る可能性も否定できないこと
  • インフルエンザシーズンに一気に病人が出たら病院に大きな負担がかかること(患者が多く押し寄せることでインフルエンザ以外の疾患の治療や手術ができなくなる、インフルエンザによる重症者に十分に対応できなくなること等)
  • 健康な若い人でも重症化する人がみられる(重症肺炎を起こす可能性がある)こと 等
から、まずは個人個人できちんと予防して、その時期その時期で感染者を少なくすることが必要というわけです。

さらに言えば、健康な人が「心配だから」「診断書・治癒証明書(こんなものはありません)をもらおう」と病院に行けば、そこでかえって新型インフルエンザをもらってきてしまうかもしれません。感染するかもしれない機会をできるだけ少なくするというのも大事です。よくよく考えて受診するようにしましょう。

<参考>
○「新型インフルエンザ対策」が爆発的流行を引き起こす
 /有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役 木村 知さん(医学博士)
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-235.html
○簡単に発熱外来というけれど
 /長尾クリニック(尼崎市) 長尾和宏 さん
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-234.html

さてさて、良いニュースはワクチンに関して。

○日本の輸入予定ワクチン「1回で効果」 英製薬会社発表
 http://www.asahi.com/special/09015/TKY200909150132.html
英医薬品大手グラクソ・スミスクライン(GSK)は14日、新型インフルのワクチンの初期の臨床試験(治験)結果を発表した。日本が輸入を検討しているワクチンも、成人では1回接種で十分な免疫が得られたとしている。
 治験はドイツで行われ、18~60歳の健康な成人130人が参加した。免疫補助剤を添加するワクチンも、日本が輸入を検討している添加しないワクチンもほぼ同じ免疫が得られたとした。

いままでワクチンは2回接種が必要とされてきましたが、もし1回でOKとなるとより多くの人に接種できることになります。朗報ですねぇ~。

こうしたデータは、どしどし公開していっていただきたいものです。本来は輸入だからダメ、国産だからOKとは一概に言えないですもんね。

さて、ワクチンに関してはさまざまな憂慮すべき事態が見えないところで起きているようで…。「1mLバイアルを10mLバイアルにすれば輸入分は不要」というニュースが少し前に流れていましたが、その接種方法の安全性は大丈夫なのかという疑問にも答えてくれている森兼先生の論文です。

私たちに無関係なことではありませんから、注視していきたいものですね。

医療ガバナンス学会から。
○「本当に接種できるのか?課題山積の新型インフルエンザワクチン」
 /東北大学大学院医学系研究科 感染制御・検査診断学 講師 森兼啓太さん
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-238.html

○死者数を増やすのは医系技官かウイルスか?
 /厚生労働省大臣政策室 政策官 村重直子さん
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-246.html

2009年9月14日月曜日

小児の治療方針

子どもはよく熱が出ることから、インフルエンザによる発熱か別の疾患によるものかという鑑別診断も重要になります。

新型インフルエンザの場合、最近、発熱から短時間での容態悪化といった症例がみられたり、インフルエンザ脳症などが心配されるため、小児科学会は頻繁に治療方針等を発表しています。

○小児科学会がインフル対策室設置へ
 http://sankei.jp.msn.com/life/body/090913/bdy0909132012000-n1.htm

 日本小児科学会は13日、新型インフルエンザに迅速に対応するための対策室を近く開設することを決めた。子供が新型インフルに感染した場合、起こしやすいとされる脳症、重症肺炎の診断や治療法を会員に周知するほか、重症や死亡例の報告を求めて今後の対策に役立てる。
 また、新型では発熱してから6~12時間の短時間で呼吸不全にいたる症例の報告が相次いでおり、こうした症例も会員に周知する。ただ、治療に必要な人工呼吸器や小児科用の集中治療室が全国的に不足しているため、同学会の理事で防衛医大小児科の野々山恵章(しげあき)教授は「今のままの状態では重症肺炎などに対応できないと危惧している」と話し、今後、国などに支援を要望する方針。
 一方、タミフルなどの治療薬については、年齢に関係なくすべての入院患者に投与▽1~5歳には全員に投与▽1歳未満についても医師の判断で慎重に投与-といった国立成育医療センターの方針を周知する。

▼ 日本小児科学会

 http://www.jpeds.or.jp/

2009年9月12日土曜日

妊婦さんへ

妊婦さんは、現在のところ新型インフルエンザに感染すると重症化される可能性があるとされています。

日本産科婦人科学会から、妊婦さんや医療関係者に向けて、頻繁に「新型インフルエンザ対応のQ&A」が更新されています。

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A
 ▼今回(平成21年9月7日)改定の要旨
 http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090907yoshi.html

今回(平成21年9月7日)改定の要旨
① ワクチンに関するQ&Aを加えたこと
② 一般病院へのアクセスが困難な場合にはかかりつけ産婦人科医が対応すること
③ 当然であるが、産科的問題(分娩や切迫早産症状など)は重症でない限りかかりつけ産婦人科医が対応すること
④ 重症例は肺炎が疑われる患者であり、それら患者は適切な病院への搬送が必要であること
⑤ 新型インフルエンザであっても簡易検査でしばしばA型陰性と出ることがあるので、周囲の状況から新型インフルエンザが疑われる場合は躊躇なくタミフル投与を勧めること
⑥ 母親が分娩前7日以内に新型インフルエンザ発症した場合、母児は別室として児への感染に関して慎重に観察すること


▼一般の方向け  http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090907a.html

▼医療関係者向け (9月7日)  http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090907b.html

 もしインフルエンザ様の症状が出たらどうしたらよいか、あらかじめ産婦人科のかかりつけ医とよく相談をしておきましょう。  ちなみに、WHO等は、妊婦さんや乳幼児、基礎疾患をもつ方々は、インフルエンザが疑われれば簡易検査を待たずに直ち(発症して48時間以内)に治療開始を、としています。

NHK情報番組

○NHKスペシャル「未知の脅威 新型ウイルス 日本は耐えられるのか」
 NHK総合/デジタル総合
 2009年9月13日(日)21:00~21:50

○ 「日曜フォーラム」 日本医師会市民公開講座 新型インフル
 (前出してますがもう一度)
 NHK教育
 2009年9月13日(日)18:00~19:00

期待できそうですね♪ o(^-^)o

2009年9月11日金曜日

ワクチンについて

ワクチンは有効! というのは確かですが、完全防御できる「切り札」ではないですし、異物を体に入れることになるので、副作用がまったくなくて当然というわけでもないんですよね。

どうも世間には「なにがなんでもワクチンをうたねば」という空気がただよっているように感じています。

ということで少しワクチンに関してまとめてみました~。
(減災どっとこむ「新型インフルエンザQ&A」と重複掲載です)
 http://www.gensai.com/swine_flu/qa_matome.html

----------------------------

  • インフルエンザ・ワクチンは明らかに有効で、接種の目的は、重症化、肺炎、死亡のリスクを下げるとともに、多くの人に対して接種をすることで流行規模を小さくすることにあります。
  • 2009年秋冬に間に合わなくても、2010年度は多くの方への接種で、より一層の効果が期待されています。
  • とはいえ、接種したからといって、絶対に感染しないというものではありません(季節性インフルエンザのワクチンでも、ウイルス感染を完全には防御できず、発症、入院、死亡に対する効果には限界があるとされています。また、乳幼児ではワクチン効果が明確でなかったり、妊婦、慢性基礎疾患患者における安全性の成績は乏しいこと等が一部専門家から指摘されています)。
  • 新型のワクチンを接種した場合、理論的には2回接種すると防御レベルまで抗体があがるのではないか、と言われています(不活化ワクチンなので、リンパ球まで免疫がつかない弱いものです)。
  • 安全性について、そもそもワクチン接種は、異物を体に入れることになるので、ある一定の割合で副作用が出ます(副作用の程度は、軽い症状(局所的な腫れ、軽い発熱等)から、大変まれですが重篤な神経症状を呈するものまで幅があります)。
  • 国産の新型のワクチンは、季節性と同等の安全性がある、と考えられています(季節性と製法が一緒であるため。副作用がまったくないわけではありません)。
  • こうした安全性(副作用)、有効性と、個人や社会における新型インフルエンザのリスク・インパクトを鑑みて、接種するか否かを判断する必要があるとする専門家もいて、議論がわかれるところです(一般企業・組織で必ずワクチン接種しましょうと取り決めるといったことにはなじみません)。
  • 2009年9月9日現在、輸入されるというワクチンは、製法が国産と異なるため、その治験結果等、情報開示、補償制度の確立が求められています(輸入のものだから危ない、有効性が低い、と決まったものではありません)。
  • もし、2009年秋冬に接種の順番にもれても、「重症化してしまうのでは」と心配することはありません。日本には、タミフル・リレンザが十分にある(ない国もある)ことから、インフルエンザ様の症状が出たら、48時間以内に診療・処方を受けるようにしましょう。ワクチンよりこちらのほうがはるかに大事という見解(菅谷憲夫・神奈川県警友会けいゆう病院小児科部長)もあります。
  • 高齢者は、インフルエンザ感染によって重症化を防ぐために、「肺炎球菌のワクチン」の接種をかかりつけ医とご相談ください。日本では一生に一度の接種しか許されていませんが、1回の接種で5年有効です(現在売り切れで入荷は少し時間がかかるとのこと)。
  • このインフルエンザシーズン、新型のワクチンには数に限りがあり、すべての人が接種できるようにはなりません。ワクチンを、とお考えの方は、まずは季節性インフルエンザの接種を済ませておきましょう(季節性と新型が同時にかかると重症化する恐れがあります)。

2009年9月9日水曜日

「日本医師会市民公開講座」

平成21年9月13日(日)午後6時より、NHK教育テレビ「日曜フォーラム」にて放送されます。

「新型インフルエンザ(H1N1)の教訓」(9月5日収録)
 http://www.med.or.jp/etc/koza21/

シンポジウムの出席者は、
 庵原 俊昭(国立病院機構三重病院長)
 和田 耕治(北里大学医学部衛生学公衆衛生学助教)
 正林 督章(厚生労働省健康局結核感染症課 新型インフルエンザ対策推進室長)
 飯沼 雅朗(日本医師会常任理事/感染症危機管理対策室長)

基本的な知識から診療を受け方まで、幅広くカバーされた内容でしたので、参考になると思います。

2009年9月7日月曜日

ワクチンについて、パブリックコメント募集

厚生労働省/インフルエンザワクチンについてパブリックコメントの募集

○「新型インフルエンザワクチン(A/H1N1)の接種について(素案)」に関する意見募集について    

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495090157&OBJCD=100495&GROUP=

締切日 9月13日

○「ワクチンの非臨床試験ガイドライン及びワクチンの臨床試験ガイドライン(案)に関する意見の募集について」  http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495090153&OBJCD=100495&GROUP=

締切日 9月30日

ワクチンの有効性、安全性について、国産ワクチンの安全性は季節性と同じ作り方をしているので、ほぼ大丈夫という話ですが、輸入のものでは議論がわかれるところです。

ワクチン接種は、新型インフルエンザに対して絶対ではないというのも覚えておきたいところ。

2009年9月6日日曜日

肺炎球菌ワクチンが売り切れ

インフルエンザ・ウイルスに感染すると、大きくわけて2つ、それをきっかけとして重症化・死亡するケースと、インフルエンザ・ウイルス自身が悪さをして重症化・死亡するケースとにわかれます。

肺炎球菌は、インフルエンザのウイルスではなく「細菌」によって亡くなるケースを少なくしようというワクチンで、日本では一生に一度しか接種できないため、いまは高齢者(70歳、80歳を超えるような)に対して、新型が流行るこの時期の接種が最適といわれています。

新型インフルエンザのワクチンがまだわからない状況なので、まずは季節性インフルエンザワクチンの接種をおすすめしますが、肺炎球菌ワクチンは、9月後半(実際の供給は10月中旬ごろ?)には輸入できる見通しとのことなので、身近に高齢者がいらっしゃるようであれば、ぜひかかりつけ医と相談してみるようすすめてみてください。

新型インフル 予防策で注目 肺炎球菌ワクチン品切れ
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090904-00000555-san-soci

 新型インフルエンザの感染が拡大するなか、インフルエンザワクチンとの併用予防策として注目されている肺炎球菌ワクチンが、国内でほぼ品切れになっていることが4日、分かった。販売元は前年の5倍の量を確保していたが、注文はすでに前年の10倍以上、問い合わせも相次いでいる。追加発注分は9月後半には輸入できる見通しだが、そのころにはすでに流行シーズンに入っていると予測されており、医療関係者は気をもんでいる。

 肺炎球菌ワクチンは一度接種すると5年以上効果が持続し、インフルエンザワクチンとの併用で、肺炎での死亡リスクは8割程度減るとされる。新型インフルエンザ患者の死因に肺炎が多いことから注目が集まっており、現在は全国で129市区町村が、接種に対する公費助成を行っている。 肺炎球菌ワクチンは米国では65~70%と高い摂取率だが、日本ではまだ認知度が低く5%。今年5月に国内で初の感染者が確認された兵庫県では、有識者による対策検証委員会でワクチンの有効性が指摘され、接種の推進に向け検討が進められることになった。

 だが、国内で新型インフルエンザ感染者の死亡が確認された8月以降、国内唯一の販売元、万有製薬(東京都千代田区)には注文が殺到。同社は今年、昨年度の販売実績(約27万人分)の5倍を供給する計画だったが、すでに10倍の注文が入っており、現在は安定供給のため出荷制限をしつつ、輸入元の米国の親会社に注文中で、9月後半には輸入できる見通しという。 ただ、輸入後に国の検定を受けて市場に流通するまでの時間がかかるため、実際の供給は10月中旬ごろの見込み。同社の担当者は「米国ではすでに備蓄体制に入っており、日本も国としての体制をとる必要があるのでは」と話す。

 兵庫県内のある開業医は、毎月一定数を注文していたが、インフルエンザに備えて多めに注文したところ、卸元業者に「しばらくは無理」と言われた。重症化の可能性が高いとされる透析患者には必ず接種するよう呼びかけてきたこともあり、「流行に入るまでに接種しないと意味がない。ハイリスク患者への重点供給などの体制も必要では」と話している。

新型インフルエンザ対策

HPなどで公開してきましたが、新型インフルエンザは日々トピックスがあります。
 http://www.gensai.com/

それらを全部網羅はできませんが、大事な情報をお届けしていきますね~。

質問などがありましたら、随時、お寄せください。