2009年10月3日土曜日

新型にも肺炎球菌ワクチンは有効

 季節性インフルエンザに感染することをきっかけとして、主に高齢者が肺炎でなくなるケースが多くみられます(高齢者の肺炎の原因となる病原体のなかで、「肺炎球菌」は最も頻度が高くなっていることから、肺炎球菌ワクチン接種が奨められてきました(ただし、季節性インフルエンザによる肺炎のすべてを防ぐものではありません)。

 新型インフルエンザは、感染したウイルスが直接悪さをして、50歳代以下の若い世代が亡くなるケースが目立っていましたが、下の記事によると、肺炎球菌による死因も見られるとのこと。

 新型インフルエンザ対策としても、肺炎球菌ワクチンが有効であるケースも多い、ということになります。朗報ですね。

○新型インフル死者の3割、細菌に同時感染

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091002-00000885-yom-sci

 新型インフルエンザの死者の約3割が細菌に同時感染していたとの調査結果を米疾病対策センター(CDC)が1日の週報で発表した。
 5月~8月に新型インフルで死亡した77人から組織を採取して検査したところ、22人が肺炎球菌などの細菌にも感染していた。
 肺炎球菌は、免疫力が落ちると増殖して、肺炎を引き起こし、患者が死亡する一因となる。
 CDCは「細菌は検出が難しいため、見逃されている可能性がある」と指摘、同時感染が疑われる場合は抗生物質による治療を検討するよう勧めている。

 現在、医療機関では、肺炎球菌ワクチンが売り切れ状態ですが、予定では10月中旬以降から徐々に出回るとのこと。

 自治体によっては補助も始まっていますので、問い合わせてみるといいですね。

2009年9月30日水曜日

ワクチンの接種場所

インフルエンザ・シーズンのピーク時、極力医療機関の負担を減らす努力が必要になります。

近々でいうと、新型インフルエンザのワクチン接種は現状では医療機関で行うといった方向性のようですが、専門家から聞かれるのは、接種は発熱患者が来ない保健所や保健センターで行うべき、という声です。

これにはいくつか理由があります。

1つに、まもなく医療機関においては定期接種の時期に入るということです。
インフルエンザシーズンに入って患者が医療機関に多く押し寄せることが想定されていますが、定期接種に加えてさらに新型インフルエンザのワクチン接種をしなくてはならないことをすでに憂慮している小児科医等がみられます。

一般にインフルエンザ様症状の患者さんの診断・治療のため、国はインフルエンザの患者と慢性疾患等の一般の患者の動線を分ける(これもなかなか難しいですが)としています。ワクチン接種を一般の医療機関で行うことになれば、さらに健康な(しかし見かけは発症していないだけかもしれない)人が加わることになります。

とすると、ここに新たなリスクが生まれます。健康な人は、新型インフルのワクチン接種をしに行って、新型をもらってきてしまうリスクがありますし、3グループに分けない限り、一般の患者にもその感染リスクが増すことになります。

そして、現在厚生労働省がワクチンの一部を「1mlバイアルを10mlバイアルに変更する」として言い出していることも、別のリスクを生む可能性があります。

東北大大学院大学院医学系研究科感染制御・検査診断学の森兼啓太講師は、10mlバイアルを使うと1本の瓶に20回穿刺することになり、微生物による汚染の機会が増す」とそのリスクを主張なさっています。

○「本当に接種できるのか?課題山積の新型インフルエンザワクチン」/森兼啓太
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-238.html

こうしたワクチン接種時の安全性は、この時代においては当然担保される必要があります。

もしこのまま厚生労働省のすすめる10mlバイアルが流通するようになるなら、どこで接種をすべきか、またどういった体制をとれば、このリスクを最小にすることができるのかといったことを十分に検討する必要があります。

そうしないと、場合によってはこうした別のリスクを負ってまで、接種する必要性があるほど高い病原性をもつ感染症なのかという本来ある議論にまで戻らざるを得なくなるように思います。

2009年9月29日火曜日

医療従事者の、医療従事者による、国民のための新型インフルエンザ対策

MRIC by 医療ガバナンス学会から。
森兼啓太 東北大学大学院医学系研究科 感染制御・検査診断学分野 講師
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-265.html

この中にも書いてありますが、WHOではなぜ日本は致死率が低いのか、また小さな流行がみられたとき(神戸・大阪等)、なぜ感染が抑えられたのかがよく議論になっていると聞いています。

致死率が低い理由としては、医療機関へのアクセスがよく、すぐに治療してもらえる、そしてこれまでの季節性インフルエンザでも、タミフルやりレンザを多く使用してきたこと、そして学校で見られるような集団の手洗いの習慣等が挙げられます。

よく、災害時には「ふだんしていることしかできない」と言われますけど、もしかすると幸運にも、日本はインフルエンザ対応に最も適応してきた国と言ってよいのかもしれませんね。

と、考えてみると「発熱外来」は、誰にとっても「ふだんしてきたこと」ではありません。
現在、厚生労働省は一度診察した等の条件付ながらファックスで、「タミフル投与」をするといった処方をしてもよい、としていますが、これも「ふだんしてきたこと」ではありません。

イギリスでは、フル・フレンドといって、電話でインフルかどうかを判断(医師ではない人が行う)をし、予め決められたその患者の友達が薬を受け取りに行って届ける(接触せずにポストに入れる)といったシステムが導入されています。
しかし、発熱=インフルエンザではないですし、これにとらわれていると大きな疾患を見落とすことが心配されています。たくさんの病気がありますもんね。

実際、イギリスのフル・フレンド制度でも、日本で行われた5,6月に行われた発熱外来でもそうしたケースが指摘されていました。
よって、ふだんの診療の延長で自治体と医師会がタッグを組んで頑張る「仙台方式」が全国でもっとも注目されました(自分の子どもが熱を出したとしても、発熱外来には行きにくいですもんね)。

新型インフルエンザ対策・診療も、できるだけ、ふだんしていることの延長でとらえるべきでしょうし、そうするために、行政は地域の医療機関を精一杯(財政面も含めて)フォローしていただきたいところです。