2009年10月24日土曜日

ワクチンの副作用

重い副作用について「季節性より少し多いという印象」という菅谷先生の談。

○新型インフルワクチン、重い副作用は接種2万人中4人
 http://www.asahi.com/special/09015/TKY200910230528.html
 今月19日に医療従事者を対象に始まった新型の豚インフルエンザのワクチン接種について、厚生労働省は23日、追跡調査で、4人の重い副作用の報告があったと発表した。接種後に発熱や動悸(どうき)、意識低下などがあったが、接種との因果関係は不明だという。全員が回復するか症状が軽くなっており、厚労省は発生率の問題は別にして、副作用自体の重さについては「季節性インフルと同程度」としている。

(中略)

 重い副作用の4人のうち入院は3人。4人とも接種当日に嘔吐(おうと)や下半身の筋肉痛、動悸などが起きた。副作用が起きやすいとされるアレルギーの病歴があるのは1人だけ。
 一方、追跡調査対象ではないが、医療従事者の接種施設から、重い副作用2人、軽い副作用23人の計25人の報告があった。重い副作用は、急激に血圧が下がる「アナフィラキシーショック」や吐き気で、既に症状は軽くなった。

 インフルに詳しいけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫小児科部長は「健康な成人2万人に重い副作用4人は多い印象だ。断定的なことは言えないが、子どもや高齢者に接種を広げるにあたっては、副作用事例を十分観察する必要がある」と話している。

2009年10月23日金曜日

5-9歳、10-14歳の層に入院が多く、大人も脳症警戒を

厚生労働省の平成21 年10 月14 日から10 月20 日の入院サーベイランスの報告から。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2009/10/dl/infuh1021-01.pdf

年齢でみると、入院患者は計445人、うち5-9歳(181人)、10-14歳(109人)の層、そして1-5歳未満(84人)と目立ちます。

基礎疾患をもつ人は162人)。一概に言えるものではありませんが、慢性呼吸器疾患の患者さんが目立ちます。そして、脳症になった方に20~39歳 40~59歳の年齢層にも見られました。

妊婦さん・医師の皆さんへ

妊婦さん、もしくは医療関係者向けに日本産科婦人科学会から。ワクチン接種に関する事項が追加されています。

○10月22日付け妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ対応のQ&A改訂をお知らせ致します。 (今回改訂の要旨、一般の方向け/医療関係者向け)
 http://www.jsog.or.jp/index.html

10mL-バイアルの取り扱いについて、厚生労働省から。
○10mL-バイアル使用に係る留意事項(医師向け)
 http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/10/dl/info1020-01.pdf

2009年10月22日木曜日

「治癒証明書」は必要なし

ようやく文部科学省から通達が…。

早く浸透して、医療機関の負担を少しでも減らすことができますように…。

○各都道府県・指定都市教育委員会等宛 新型インフルエンザに関する対応について(第17報)
  http://www.mext.go.jp/a_menu/influtaisaku/syousai/1285989.htm

 厚生労働省事務連絡においては、「地域の事業者等に対し、インフルエンザの軽症患者であれば、解熱後2日を経過すれば外出の自粛を終了することが可能であると考えられており、従事者等の再出勤に先立って医療機関を受診させ治癒証明書を取得させる意義はないことについて、周知すること。また同様に、症状がないにもかかわらず、新型インフルエンザに感染していないことを証明するために、医療機関を受診させ簡易迅速検査やPCR検査を行う意義はないことについても、周知すること。」とされています。 ついては、これを踏まえ、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第19条の規定に基づく児童生徒等の出席停止を行った場合などでも再出席に先立って治癒証明書を取得させる意義はないと考えられますので、適切に対応くださるようお願いします。

2009年10月20日火曜日

決定事項は「健康な成人のみ接種1回」

現段階で決まっていることは、新型インフルエンザワクチン治験対象者そのままに、健康な成人のみが1回接種ということだけです。

今日明日中に政治的な判断が下されそうですが、少なくとも、
20歳以上の健康成人にしか治験をしていないなかで、
 → 13歳以上の健康な成人OK 
 → 妊婦さんOK
 → 基礎疾患をもった人OK
といった推論・仮説を積み重ねた不思議な結論は、この時点で先送りに…。

昨日午後9時から急遽専門家を入れ替えて行われた委員会の様子からはさまざまな問題が浮き彫りになってとても興味深いです。

メンバーは、16日にも出席していた田代眞人氏、尾身茂氏に加え、森澤雄司・自治医大病院感染制御部部長、森兼啓太・東北大大学院講師、岩田健太郎・神戸大大学院教授の3人が新たに加わりました。

○会議の詳録(随時更新途中ですが)ロハスメディカルから。
  http://lohasmedical.jp/news/2009/10/20010545.php

○19日の委員会に出席した神戸大学感染症専門の岩田教授のブログ
 http://georgebest1969.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-f939.html

新型インフルは国民の生命がかかていることに加えとても複雑なので報道の仕方がとても難しいかもしれませんが、あたかも「決定」として流されると混乱・反響が大きいですね。 流すほうの問題かもしれませんが…。

先日ご紹介した以下の記事も、まだ読みになっていなければあわせてご覧くださいね。

○新型インフル 「厚生労働省を信じてはいけない」 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/18001220.php

2009年10月19日月曜日

肺炎球菌ワクチン、再接種認める

海外と日本のワクチン行政には大きな違いがみられます。

ワクチンに関して海外で認められていることが日本では認められなかったり、また時間がかかったりとヘンなことが多かったんですが、ようやく欧米並みになりそうな兆しが見えてきました。

今回明らかになってきた動きはこれです。
日本では1生に1度しか接種できない肺炎球菌ワクチンですが、この接種も5年程度たてば再接種ができるようになるとのこと。

○肺炎球菌ワクチンの再接種認める…厚労省
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20091018-OYT1T00677.htm?from=main5

 厚生労働省は18日、肺炎の重症化を予防する肺炎球菌ワクチンについて、1回目の接種から5年程度経ていれば再接種を認めることを決めた。

 新型インフルエンザに感染した65歳以上の高齢者が重篤な肺炎を併発することを防ぐ効果も期待される。
 同ワクチンは従来、再接種すると強い副作用が出るとして、接種は一生に1度とされていた。だが、同ワクチンの効果は5年以上たつと低下する。海外などで4年以上の間隔を置けば、再接種は問題ないとの報告が出され、現在では欧米の多くの国で再接種が認められている。
 この日開かれた同省の薬事・食品衛生審議会安全対策調査会は、5年を目安に一定の間隔があれば、医師の判断で再接種を認めることで合意。同省はインフルエンザワクチンとの同時接種も認めた。

子どもの肺炎球菌ワクチンも承認されたことから、どちらの年齢層にも接種をすれば新型を含むインフルエンザによる重症者が減るのではと期待されるところです。

これまでは季節性インフルエンザに感染したことをきっかけとして肺炎などで亡くなることが多い高齢者層に接種されてきた肺炎球菌ワクチンですが、これにより新型インフルなどのハイリスク者である基礎疾患をもった方も積極的な接種がなされるようになるかもしれません。

そしてまた、季節性で亡くなることが多いもう一つの年齢層、小児の肺炎球菌ワクチンも承認の動き。これにより新型インフルにも大きな武器を備えることができるといえそうです。

○肺炎球菌:小児用ワクチン、国内販売を承認
 http://mainichi.jp/select/science/news/20091017ddm041040150000c.html

 厚生労働省は16日、小児用の肺炎球菌ワクチンの国内販売を承認した。肺炎球菌は子どもに重症の髄膜炎や肺炎などを起こす。国内では、来春までに小児科などで任意接種が受けられるようになる見通し。
 承認されたのはワイス(東京都品川区)が申請していた小児用肺炎球菌ワクチン「プレベナー」。日本の承認は98カ国目。
 肺炎球菌が原因の髄膜炎は年間約200人が発症する。病気の進行が早く、致死率は10%と言われている。接種対象は生後2カ月から9歳以下。接種時期は、生後2カ月以上~7カ月未満に始め、1歳3カ月までに計4回を標準としている。

一般的に、ワクチンを多くの人に接種することで、社会全体として感染の広がりを抑えたり、助かる人が多くなって、国にかかる医療費全体も安くなるといった効果が見込めることになります。

その一方で、ワクチンを接種により残念ながら副反応(副作用)が一定の割合で出ます。たとえば100万人に1人というようなごく稀でごく小さな割合ながら、重篤な後遺症が残るケースもあります。こうした補償をどうするか。社会全体として接種したのだから、万一重篤な副反応がみられた場合には社会全体として支えましょう、ということが求められます。

それが欧米ですでに行われている無過失補償制度(接種した医師・メーカーが責任をとることなく、十分な補償を行うという制度で、この補償を受ける場合には訴訟をしないということが条件に。ですが日本は訴訟の権利は万人に認められていますから、新型ではすぐに適用できなかった)です。

厚生労働省・足立政務官は、この制度を新型に間に合わせることができなかったが、これから出す特別法に「今後検討していく」という条文を盛り込むことを明言なさっていますので、まだ時間がかかるかもしれませんがこれも実施される方向に…。

日本は世界の流れに反するワクチン政策を行ってきたとずっと揶揄されてきましたが、民主党政権はこれに前向きなので、ようやく欧米並みのワクチン行政になるという嬉しい予感…。

ワクチンだけでなく海外で認められている未承認薬(抗がん剤等)も認められるようになるといいですね。

2009年10月18日日曜日

ワクチン1回かどうかは不透明に?

自治体によっては19日から医療関係者に向けて始まるとされるワクチン接種ですが、ワクチン1回でいいよ、という話が伝わり、接種の自治体等はこの時期にと困惑が広がっている様子です。

○1回接種、自治体は「寝耳に水」
http://sankei.jp.msn.com/life/body/091017/bdy0910172000004-n1.htm

報道が先走りましたが、実はまだ政務三役も了承しておらず、決定事項ではない様子。
まだこの決定までには紆余曲折もあるかもしれません。(これを決定した「専門家委員会」のメンバーの問題とその議論の過程に疑問符がつけられているため。足立政務官は、「科学者の端くれとして断じて許せない」と激怒したとも報道されていますし、確かに素人目に見てもおかしな部分が満載です)

○新型インフル ワクチン1回化は「科学の仮面かぶったデタラメ」
 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/17190448.php

(以下、世田谷区医師会講演会において上昌弘・東大医科研特任准教授の話から抜粋)

 「議論の判断材料になった臨床試験のデザインは非劣性試験といって、標準治療が存在する時に、効果は劣る代わりに別のメリットがあるような治療法をテストし、劣る効果と得られるメリットとを比較検討するためのもの。今回の場合、標準治療は2回打ち、効果は抗体価の上昇、メリットは接種人数が増えること、になる。だから、試験結果の正しい読み方は、2回打ちに比べて1回打ちは抗体価の上昇が10ポイントほど低いけれど、それを容認してでも接種人数を増やすべきか、ということになる。こんなのは学生でも半年ぐらい勉強すれば分かること。なぜこんな簡単なことを間違えるかと言えば、専門家会議と言いながらメンバーは素人だからだ」
 さらに「百歩譲ってメリットが上回ることを認めたとしても、20歳以上の人を対象にした試験で、なぜ13歳以上まで適用を広げられるのか。科学的には言えるはずがない。特に今回は中高生の罹患も重症化事例も多いことが知られていて、成人と様相が明らかに異なる。臨床試験の勉強をした人なら絶対にしないような合意をしてしまっている。この国は危険だ。素人が判断して、それを皆で拝んでいる」と述べた。
 同じく講演会で講師を務めた森澤雄司・自治医大感染制御部部長も「そもそも抗体価が上昇するからといって、ワクチンに効果があるとは限らない。また、海外のワクチンが1回で効果があると言っても、それと国産ワクチンとは全く別物。それぞれ独立に判断しなければならない。前提条件を3重にも4重にも間違えている。以前は確信犯的にやっていると思っていたのだけれど、最近は本当に知らないんじゃないかと思うようになった」と、講演会終了後の取材に対して語った。

 詳細には、次の記事。

○新型インフル 「厚生労働省を信じてはいけない」
 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/18001220.php

記事は少し長いですが、問題点が多数見えてきます。
なかでも、「新型と同じH1N1型である季節性Aソ連型に過去に感染した際に、新型に対しても基礎的な免疫を得ている可能性があるという推論の上に、13歳以上ならば同様に基礎的な免疫を得ているだろうという推論を二段階重ねて、この結論を導き出している」と指摘されていますが、この推論には専門家ならずとも疑問符がつくところです。

これまでのところ、中高生の間で流行したり重症化したりする例が目立っていることを考え合わせると、少なくともこの年齢層に対して2回接種をしないという決定はよくわかりませんね。