2009年9月19日土曜日

悪化し始めていたら48時間以内にタミフル

○短時間で子供が呼吸困難に 特異な症例相次ぐ  http://sankei.jp.msn.com/life/body/090912/bdy0909122117005-n1.htm

○軽症も、タミフル早期投与を…感染症学会   http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/influenza/if90916c.htm?from=tokusyu

提言はこちら。
○日本感染症学会トップページ
 http://www.kansensho.or.jp/

○新型インフルの小6死亡  http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090918-OYT8T00247.htm

○新型インフル、感染確定前でも治療薬…厚労省通知  http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090919-OYT8T00308.htm?from=yoltop

 新型インフルエンザに感染して死亡した横浜市の小学6年の男子児童(12)がタミフルなどの治療薬を投与されていなかったことを受け、厚生労働省は18日、感染の疑いがある患者については、感染が確定していなくても医師の判断でタミフル等の治療薬を投与できることを改めて周知する通知を都道府県などに出した。
 横浜市などによると、男児は2日午前、高熱を出して医療機関を受診、簡易検査を受けたが陰性だった。この医療機関ではタミフルなどの投与を受けず、翌日に容体が悪化して入院した。

 日本感染症学会の「可能な限り全例に対する発病早期からの抗インフルエンザ薬による治療開始が最も重要であると言えます」という提言はとても画期的で重く尊重すべきで、けいゆう病院の菅谷憲夫先生も再三、インフルエンザと疑われる場合には直ちにタミフル投与を、とされています。

たとえば基礎疾患がない健康な小児が重症肺炎を合併した症例。
○IASR/<速報>急速に呼吸障害が進行した小児のパンデミック(H1N1)2009による重症肺炎症例
 http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3562.html

 そして、WHO(8月21日)は「受診時にすでに重症な状態、あるいは状況が悪化し始める患者が現れたら、なるべく早くオセルタミビルで治療を開始することをWHOは推奨する。早期、特に症状出現後48時間以内に治療を開始することと、良好な治療成績は非常に強い関連があることを研究結果が示している。重症、あるいは症状が悪化している患者に対しては、たとえ開始時期が遅くなっても治療を行なうべきである。オセルタミビルがない、あるいは何らかの理由で使用できない場合はザナミビルを投与することも可能である」としています。

○WHO/推奨された抗ウイルス薬の使用(国立感染症研究所訳)
 http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009who/WHO_antivirals.html

 一方で、患者が多くでる時期に薬不足が起こるのではと心配する声、耐性誘導の心配等が聞かれます。
 感染したとしても、その多くは軽症であることは間違いありません。「驚くほどみな軽症」と話している開業医もいらっしゃるほどですが、ごくごく一部には健康な人に重症者・死亡者が出るという特異なインフルエンザ・ウイルス。 大丈夫な人とそうでない人の差がどこにあるのかつかめていません。

一般の方への啓発とともに治療も、本当に難しいですね。

産科開業医に迫る危機!

少し前から訴えられてきたことですが、もう待ったなしの状況になりました。


○産科開業医に資金繰りの危機 福祉医療機構に上納の構図
 http://lohasmedical.jp/news/2009/09/01125225.php

 10月から出産育児一時金が健康保険組合から医療機関へ直接支払われるようになる。医療機関の未収金に配慮した政策だったが、窓口払いから保険支払いへと変わることにより、分娩の2~3ヵ月後まで医療機関の収入がほとんどなくなる。このため、開業医の多くから資金ショートするとの悲鳴が上がっている。その間の資金繰りを支援すると称して、厚生労働省の外郭団体が有利子での融資を準備しているが、一度借りると引退まで借金を背負い続けることになる例が多いとみられる。

 これまでは本人から退院時に徴収していた。支払いなしに産み逃げされて医療機関の困る事例が相次いだため、分娩費に充てる想定で支払われている出産育児一時金を10月から医療機関が直接受け取れるようにした。しかし、この支払い処理が通常の保険支払いと同じに行われるため、入金は2~3ヵ月後になる。月に25分娩扱う診療所であれば、月1050万円×3の3000万円程度の資金ショートが生じる計算になる。開業費用の借金を返しながら診療を続けている開業医は、手元資金にそれほど余裕はないのが普通なので重大な問題だ。

 この資金繰りを支援するための融資制度も厚生労働省の外郭団体である独立行政法人・福祉医療機構で同時に創設された。しかし、有利子(1.6%)で要保証人ということから、開業医たちの不満が爆発寸前になっている。少し考えていただくと分かるが、開業医側には何の瑕疵もないのに借金の必要な状態に追い込まれたうえで、分娩取り扱いを続ける限り1.6%の年貢を機構に納め続けねばならない構図になっている。

 たとえば、愛知県内にある産科施設の35パーセントが直接払い導入に当たって「融資の必要あり」と回答しており、開業医の1割以上が廃業も考慮しているとのことで、もう待ったなしの状態とのこと。

 ということで、要望書です。一人でも多くの方に署名をとしていますので、詳しくは下記の頁をご覧ください。

○出産育児一時金 日本のお産を守る会が要望書掲示
 http://lohasmedical.jp/news/2009/09/19071951.php

それにしても、なんと理不尽なことでしょう。
ただでさえ産科不足の折にこの仕打ち。

2009年9月18日金曜日

危険な兆候

新型インフルエンザはかかってもほとんどが軽症で、自宅で安静にしている人も多いことでしょうね。

とはいえ、大人も子どもさんも、療養中に次のような兆候がみられたら直ちに診療にかかるようにと推奨されています。

○子供の場合
  • インフルエンザ様症状改善後の再発熱や咳の悪化
  • 激しい、持続性の嘔吐
  • 頻呼吸や呼吸困難
  • 蒼白、チアノーゼ
  • 水分摂取不良
  • 意識あるいは意思疎通不良
  • 機嫌が悪く、抱っこされることを嫌がる
○大人の場合
  • インフルエンザ様症状改善後の再発熱や咳の悪化
  • 激しい、持続性の嘔吐
  • 胸部や腹部の痛みや圧迫感
  • 突然のめまい
  • 混迷

2009年9月17日木曜日

治癒証明書 → そんなものはありません

治癒証明書、陰性証明書、診断書など、数々の証明をもってくるようにとする企業・学校等があるという報道がありました。

○新型インフル「陰性証明」求め無用受診殺到
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090915-00000615-yom-soci
新型インフルエンザの流行が広がる中、「感染していない」証明のために簡易検査を求める人の受診が相次ぎ、医療現場で混乱を招いている。 幼稚園や保育園、学校、会社などが、感染の拡大を恐れ、検査を受けるよう求めるためとみられるが、医師らは「少しの発熱で受診して、医療機関で逆に感染したり、重症者の治療が遅れたりする危険もある」として、無用な検査受診をしないよう訴えている。


そもそも新型インフルエンザにおいて、
  • 医療機関で行われる簡易検査の感度は10~70パーセント(CDC(米疾病対策センター))。陰性でも、かかっていないという証明にはならない。
  • 診断を確定するには、PCR検査(遺伝子レベルの検査)をしなければならないが、現在一般診療では行われていない。
  • 新型インフルエンザの場合、「発症後1週間、または解熱後2日を過ぎれば、他人に感染させる可能性はなくなる」とされていますので、治癒証明書は必要ない。

こうしたことが十分に浸透していないようです。

沖縄県立中部病院からのリリース
○インフルエンザと診断された患者さんとご家族へ完治証明書および診断書の発行について
 http://www.hosp.pref.okinawa.jp/chubu/influenza/20090826.html

ただでさえ患者殺到のなか病院の負担を少しでも減らすことが大切ですし、かかっていない人が陰性証明書をもらいに病院に行けば、そこで「もらってきてしまう」恐れが出てきます。

どの自治体でもこうした呼びかけを住民になさったほうがよさそうですね。
(本当は国がやるべきかな?)

2009年9月15日火曜日

怖いの? 怖くないの?

新型インフルエンザは怖いんだぞぅ~、というガイダンスが多いですが、日本の人口の20パーセントが発病したとして、入院は1.5パーセント、死亡するのではと考えられているのは0.03パーセントです。

つまり、全国民の98.7パーセントの人は入院しないですし、99.97パーセントは死亡しないということになります。

季節性インフルエンザより感染性は高い(「新型」なのでほとんどの人に免疫がないため)とされていますが、重症化するのはごく一部、さらに残念ながら亡くなるのもそのごくごく一部といえます。

とはいえ、

  • その重症化・死亡する方があなたの身近に出る可能性も否定できないこと
  • インフルエンザシーズンに一気に病人が出たら病院に大きな負担がかかること(患者が多く押し寄せることでインフルエンザ以外の疾患の治療や手術ができなくなる、インフルエンザによる重症者に十分に対応できなくなること等)
  • 健康な若い人でも重症化する人がみられる(重症肺炎を起こす可能性がある)こと 等
から、まずは個人個人できちんと予防して、その時期その時期で感染者を少なくすることが必要というわけです。

さらに言えば、健康な人が「心配だから」「診断書・治癒証明書(こんなものはありません)をもらおう」と病院に行けば、そこでかえって新型インフルエンザをもらってきてしまうかもしれません。感染するかもしれない機会をできるだけ少なくするというのも大事です。よくよく考えて受診するようにしましょう。

<参考>
○「新型インフルエンザ対策」が爆発的流行を引き起こす
 /有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役 木村 知さん(医学博士)
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-235.html
○簡単に発熱外来というけれど
 /長尾クリニック(尼崎市) 長尾和宏 さん
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-234.html

さてさて、良いニュースはワクチンに関して。

○日本の輸入予定ワクチン「1回で効果」 英製薬会社発表
 http://www.asahi.com/special/09015/TKY200909150132.html
英医薬品大手グラクソ・スミスクライン(GSK)は14日、新型インフルのワクチンの初期の臨床試験(治験)結果を発表した。日本が輸入を検討しているワクチンも、成人では1回接種で十分な免疫が得られたとしている。
 治験はドイツで行われ、18~60歳の健康な成人130人が参加した。免疫補助剤を添加するワクチンも、日本が輸入を検討している添加しないワクチンもほぼ同じ免疫が得られたとした。

いままでワクチンは2回接種が必要とされてきましたが、もし1回でOKとなるとより多くの人に接種できることになります。朗報ですねぇ~。

こうしたデータは、どしどし公開していっていただきたいものです。本来は輸入だからダメ、国産だからOKとは一概に言えないですもんね。

さて、ワクチンに関してはさまざまな憂慮すべき事態が見えないところで起きているようで…。「1mLバイアルを10mLバイアルにすれば輸入分は不要」というニュースが少し前に流れていましたが、その接種方法の安全性は大丈夫なのかという疑問にも答えてくれている森兼先生の論文です。

私たちに無関係なことではありませんから、注視していきたいものですね。

医療ガバナンス学会から。
○「本当に接種できるのか?課題山積の新型インフルエンザワクチン」
 /東北大学大学院医学系研究科 感染制御・検査診断学 講師 森兼啓太さん
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-238.html

○死者数を増やすのは医系技官かウイルスか?
 /厚生労働省大臣政策室 政策官 村重直子さん
 http://medg.jp/mt/2009/09/-vol-246.html

2009年9月14日月曜日

小児の治療方針

子どもはよく熱が出ることから、インフルエンザによる発熱か別の疾患によるものかという鑑別診断も重要になります。

新型インフルエンザの場合、最近、発熱から短時間での容態悪化といった症例がみられたり、インフルエンザ脳症などが心配されるため、小児科学会は頻繁に治療方針等を発表しています。

○小児科学会がインフル対策室設置へ
 http://sankei.jp.msn.com/life/body/090913/bdy0909132012000-n1.htm

 日本小児科学会は13日、新型インフルエンザに迅速に対応するための対策室を近く開設することを決めた。子供が新型インフルに感染した場合、起こしやすいとされる脳症、重症肺炎の診断や治療法を会員に周知するほか、重症や死亡例の報告を求めて今後の対策に役立てる。
 また、新型では発熱してから6~12時間の短時間で呼吸不全にいたる症例の報告が相次いでおり、こうした症例も会員に周知する。ただ、治療に必要な人工呼吸器や小児科用の集中治療室が全国的に不足しているため、同学会の理事で防衛医大小児科の野々山恵章(しげあき)教授は「今のままの状態では重症肺炎などに対応できないと危惧している」と話し、今後、国などに支援を要望する方針。
 一方、タミフルなどの治療薬については、年齢に関係なくすべての入院患者に投与▽1~5歳には全員に投与▽1歳未満についても医師の判断で慎重に投与-といった国立成育医療センターの方針を周知する。

▼ 日本小児科学会

 http://www.jpeds.or.jp/