2009年10月20日火曜日

決定事項は「健康な成人のみ接種1回」

現段階で決まっていることは、新型インフルエンザワクチン治験対象者そのままに、健康な成人のみが1回接種ということだけです。

今日明日中に政治的な判断が下されそうですが、少なくとも、
20歳以上の健康成人にしか治験をしていないなかで、
 → 13歳以上の健康な成人OK 
 → 妊婦さんOK
 → 基礎疾患をもった人OK
といった推論・仮説を積み重ねた不思議な結論は、この時点で先送りに…。

昨日午後9時から急遽専門家を入れ替えて行われた委員会の様子からはさまざまな問題が浮き彫りになってとても興味深いです。

メンバーは、16日にも出席していた田代眞人氏、尾身茂氏に加え、森澤雄司・自治医大病院感染制御部部長、森兼啓太・東北大大学院講師、岩田健太郎・神戸大大学院教授の3人が新たに加わりました。

○会議の詳録(随時更新途中ですが)ロハスメディカルから。
  http://lohasmedical.jp/news/2009/10/20010545.php

○19日の委員会に出席した神戸大学感染症専門の岩田教授のブログ
 http://georgebest1969.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-f939.html

新型インフルは国民の生命がかかていることに加えとても複雑なので報道の仕方がとても難しいかもしれませんが、あたかも「決定」として流されると混乱・反響が大きいですね。 流すほうの問題かもしれませんが…。

先日ご紹介した以下の記事も、まだ読みになっていなければあわせてご覧くださいね。

○新型インフル 「厚生労働省を信じてはいけない」 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/18001220.php

2009年10月19日月曜日

肺炎球菌ワクチン、再接種認める

海外と日本のワクチン行政には大きな違いがみられます。

ワクチンに関して海外で認められていることが日本では認められなかったり、また時間がかかったりとヘンなことが多かったんですが、ようやく欧米並みになりそうな兆しが見えてきました。

今回明らかになってきた動きはこれです。
日本では1生に1度しか接種できない肺炎球菌ワクチンですが、この接種も5年程度たてば再接種ができるようになるとのこと。

○肺炎球菌ワクチンの再接種認める…厚労省
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20091018-OYT1T00677.htm?from=main5

 厚生労働省は18日、肺炎の重症化を予防する肺炎球菌ワクチンについて、1回目の接種から5年程度経ていれば再接種を認めることを決めた。

 新型インフルエンザに感染した65歳以上の高齢者が重篤な肺炎を併発することを防ぐ効果も期待される。
 同ワクチンは従来、再接種すると強い副作用が出るとして、接種は一生に1度とされていた。だが、同ワクチンの効果は5年以上たつと低下する。海外などで4年以上の間隔を置けば、再接種は問題ないとの報告が出され、現在では欧米の多くの国で再接種が認められている。
 この日開かれた同省の薬事・食品衛生審議会安全対策調査会は、5年を目安に一定の間隔があれば、医師の判断で再接種を認めることで合意。同省はインフルエンザワクチンとの同時接種も認めた。

子どもの肺炎球菌ワクチンも承認されたことから、どちらの年齢層にも接種をすれば新型を含むインフルエンザによる重症者が減るのではと期待されるところです。

これまでは季節性インフルエンザに感染したことをきっかけとして肺炎などで亡くなることが多い高齢者層に接種されてきた肺炎球菌ワクチンですが、これにより新型インフルなどのハイリスク者である基礎疾患をもった方も積極的な接種がなされるようになるかもしれません。

そしてまた、季節性で亡くなることが多いもう一つの年齢層、小児の肺炎球菌ワクチンも承認の動き。これにより新型インフルにも大きな武器を備えることができるといえそうです。

○肺炎球菌:小児用ワクチン、国内販売を承認
 http://mainichi.jp/select/science/news/20091017ddm041040150000c.html

 厚生労働省は16日、小児用の肺炎球菌ワクチンの国内販売を承認した。肺炎球菌は子どもに重症の髄膜炎や肺炎などを起こす。国内では、来春までに小児科などで任意接種が受けられるようになる見通し。
 承認されたのはワイス(東京都品川区)が申請していた小児用肺炎球菌ワクチン「プレベナー」。日本の承認は98カ国目。
 肺炎球菌が原因の髄膜炎は年間約200人が発症する。病気の進行が早く、致死率は10%と言われている。接種対象は生後2カ月から9歳以下。接種時期は、生後2カ月以上~7カ月未満に始め、1歳3カ月までに計4回を標準としている。

一般的に、ワクチンを多くの人に接種することで、社会全体として感染の広がりを抑えたり、助かる人が多くなって、国にかかる医療費全体も安くなるといった効果が見込めることになります。

その一方で、ワクチンを接種により残念ながら副反応(副作用)が一定の割合で出ます。たとえば100万人に1人というようなごく稀でごく小さな割合ながら、重篤な後遺症が残るケースもあります。こうした補償をどうするか。社会全体として接種したのだから、万一重篤な副反応がみられた場合には社会全体として支えましょう、ということが求められます。

それが欧米ですでに行われている無過失補償制度(接種した医師・メーカーが責任をとることなく、十分な補償を行うという制度で、この補償を受ける場合には訴訟をしないということが条件に。ですが日本は訴訟の権利は万人に認められていますから、新型ではすぐに適用できなかった)です。

厚生労働省・足立政務官は、この制度を新型に間に合わせることができなかったが、これから出す特別法に「今後検討していく」という条文を盛り込むことを明言なさっていますので、まだ時間がかかるかもしれませんがこれも実施される方向に…。

日本は世界の流れに反するワクチン政策を行ってきたとずっと揶揄されてきましたが、民主党政権はこれに前向きなので、ようやく欧米並みのワクチン行政になるという嬉しい予感…。

ワクチンだけでなく海外で認められている未承認薬(抗がん剤等)も認められるようになるといいですね。

2009年10月18日日曜日

ワクチン1回かどうかは不透明に?

自治体によっては19日から医療関係者に向けて始まるとされるワクチン接種ですが、ワクチン1回でいいよ、という話が伝わり、接種の自治体等はこの時期にと困惑が広がっている様子です。

○1回接種、自治体は「寝耳に水」
http://sankei.jp.msn.com/life/body/091017/bdy0910172000004-n1.htm

報道が先走りましたが、実はまだ政務三役も了承しておらず、決定事項ではない様子。
まだこの決定までには紆余曲折もあるかもしれません。(これを決定した「専門家委員会」のメンバーの問題とその議論の過程に疑問符がつけられているため。足立政務官は、「科学者の端くれとして断じて許せない」と激怒したとも報道されていますし、確かに素人目に見てもおかしな部分が満載です)

○新型インフル ワクチン1回化は「科学の仮面かぶったデタラメ」
 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/17190448.php

(以下、世田谷区医師会講演会において上昌弘・東大医科研特任准教授の話から抜粋)

 「議論の判断材料になった臨床試験のデザインは非劣性試験といって、標準治療が存在する時に、効果は劣る代わりに別のメリットがあるような治療法をテストし、劣る効果と得られるメリットとを比較検討するためのもの。今回の場合、標準治療は2回打ち、効果は抗体価の上昇、メリットは接種人数が増えること、になる。だから、試験結果の正しい読み方は、2回打ちに比べて1回打ちは抗体価の上昇が10ポイントほど低いけれど、それを容認してでも接種人数を増やすべきか、ということになる。こんなのは学生でも半年ぐらい勉強すれば分かること。なぜこんな簡単なことを間違えるかと言えば、専門家会議と言いながらメンバーは素人だからだ」
 さらに「百歩譲ってメリットが上回ることを認めたとしても、20歳以上の人を対象にした試験で、なぜ13歳以上まで適用を広げられるのか。科学的には言えるはずがない。特に今回は中高生の罹患も重症化事例も多いことが知られていて、成人と様相が明らかに異なる。臨床試験の勉強をした人なら絶対にしないような合意をしてしまっている。この国は危険だ。素人が判断して、それを皆で拝んでいる」と述べた。
 同じく講演会で講師を務めた森澤雄司・自治医大感染制御部部長も「そもそも抗体価が上昇するからといって、ワクチンに効果があるとは限らない。また、海外のワクチンが1回で効果があると言っても、それと国産ワクチンとは全く別物。それぞれ独立に判断しなければならない。前提条件を3重にも4重にも間違えている。以前は確信犯的にやっていると思っていたのだけれど、最近は本当に知らないんじゃないかと思うようになった」と、講演会終了後の取材に対して語った。

 詳細には、次の記事。

○新型インフル 「厚生労働省を信じてはいけない」
 http://lohasmedical.jp/news/2009/10/18001220.php

記事は少し長いですが、問題点が多数見えてきます。
なかでも、「新型と同じH1N1型である季節性Aソ連型に過去に感染した際に、新型に対しても基礎的な免疫を得ている可能性があるという推論の上に、13歳以上ならば同様に基礎的な免疫を得ているだろうという推論を二段階重ねて、この結論を導き出している」と指摘されていますが、この推論には専門家ならずとも疑問符がつくところです。

これまでのところ、中高生の間で流行したり重症化したりする例が目立っていることを考え合わせると、少なくともこの年齢層に対して2回接種をしないという決定はよくわかりませんね。

2009年10月16日金曜日

ワクチン接種、原則1回という案

接種は原則1回という方向性が示されました。

これが実施されれば、医療機関の負担も減りますし、ワクチンを接種できる人数も増えるといったことになりそうですね。

新型インフルワクチン、接種は原則1回=13歳未満、免疫不全者は2回
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000138-jij-soci

 厚生労働省が16日開いた新型インフルエンザワクチンについての意見交換会で、出席した専門家らは、国産ワクチンの接種回数を原則1回とする方針で合意した。同省は長妻昭厚労相に報告し、近く最終決定する。

 国産ワクチンの臨床試験で、1回の接種で十分な免疫が得られることが分かったため、2回接種の方針を改めた。これまでの計画より、国産ワクチンを打てる人が増える見通しとなった。 合意によると、1回接種となるのは医療従事者と1歳未満の乳児の保護者に加え、妊婦、中学・高校生、高齢者。 持病のある人も基本的に1回接種だが、白血病やエイズウイルス(HIV)感染などで免疫状態が悪化している人は、主治医の判断で2回接種もできる。1歳以上13歳未満の子どもは1回接種では十分な免疫が得られない可能性があり、原則的に2回接種とする。 

厚労省からのお知らせ

お待ちしておりました。
厚生労働省から、「念のため」あるいは「かかっていない証明」のために「簡易検査」や「陰性証明書」を求めないでほしいこと、救急外来の混乱を回避してほしいこと等が求められました。

あとは、10mLバイアルの現場での取説でしょうか~。

○新型で「念のため」の受診控えてと呼び掛け―厚労省政務官
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000009-cbn-soci

 厚生労働省の足立信也政務官は10月16日の記者会見で、新型インフルエンザ患者が特に多く報告されている5都道府県の担当者に実施した聞き取り調査で、感染していないか確認するため、簡易検査を受ける目的で受診するケースが多く見受けられるとして、こうした受診を自粛するよう呼び掛けた。

 調査は今週、北海道、東京、愛知、大阪、福岡の新型インフルエンザ対策の担当者を対象に実施し、医療提供体制に問題が起きていないかなどを聞いた。その結果、家族が新型インフルエンザにかかった場合、本人が感染していないことを証明する、いわゆる「陰性証明」を求めて受診するケースが見受けられたという。しかし、足立政務官は「医学的には本人が感染していないことを証明するのは困難」と述べ、企業などに陰性証明を求めることを自粛するよう呼び掛けた。

 また、三次救急医療機関を直接受診するケースも多く見受けられたとして、全国的に新型インフルエンザ患者が増加する中、「救急外来が混雑することで、他の救急患者さんへの対応が手薄になったり、遅れたりする可能性がある」と強調し、かかりつけ医と発熱時の対応についてあらかじめ相談することなどを求めた。

ワクチンの有効性ほか

 まずは朗報から。

国産ワクチン、1回の接種で効果 厚労省
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000050-mai-soci

 厚生労働省は16日、新型インフルエンザの国産ワクチンについて、「1回の接種で効果的な免疫反応が期待できる」とする治験結果を公表した。新型インフルエンザは大半の人が免疫を持たないため、これまで2回接種を前提にしていた。だが、1回接種で十分になった場合、接種人数が増える可能性がある。

 治験は北里研究所が製造したワクチンについて9月17日から健康な成人200人に対して実施。通常量(15マイクログラム)を皮下注射した結果、血液中で免疫として働く抗体の量が4倍以上上昇するなど、ワクチンの有効性を示す基準を満たした人が96人中72人(75%)で、ワクチンとして有効と評価される国際基準の40%を上回った。また倍の量(30マイクログラム)を接種した98人では86人(87.8%)に上った。

 ワクチンを接種した後の副作用は45.9%の人にあり、接種個所が赤く腫れたりする頻度が高かった。比較的重い副作用として急なアレルギーショックなどもあったという。
 新型インフルエンザのワクチン接種回数を巡っては米厚生省も9月、成人に対する臨床試験結果から、1回の接種で十分な免疫効果を得られたと発表していた。

 ワクチンの効果については、朗報ですね。
 副反応に関しても報告がありますが、ちなみに、8/20、8/27新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会の資料「予防接種後副反応報告書集計報告」によると、インフルエンザでは、ワクチン接種者数13,064,354人に対して、副反応報告症例数25。頻度は、10,000人当たり、0.01913です。

 ワクチンについてより詳しい内容は、厚生労働省HPを参照のこと。
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_vaccine.html

 そして、5月から専門家がずっと指摘してきましたが、早くも医療機関パンクの予兆が。

新型インフル:患者殺到続けば危険 愛知県病院協会が声明
 http://mainichi.jp/select/science/news/20091016k0000e040073000c.html
 


 新型インフルエンザの拡大が続く中、重症緊急患者を受け入れる3次緊急病院にインフルエンザを疑う受診者が土日祝日に殺到していることが分かった。愛知県病院協会が15日明らかにしたもので、稲垣春夫会長(トヨタ記念病院院長)は「現場はパンク状態。患者の殺到が続けば、事故が起きる心配もあり、冷静な対応をお願いしたい」などとする緊急アピールを発表した。

 同協会などによると、名古屋第2赤十字病院(名古屋市昭和区)では、今月10~12日の3連休、インフルエンザではないかと訴える受診者が平日の4~9倍にあたる約130~280人訪れた。また、名古屋掖済会病院(同市中川区)でも、小児科で通常の土日祝日の4倍に上る受診者が訪れ、診察まで4時間待ちだったという。土日祝日に開業医が休みになるのが原因とみられ、病院では医師を増員するなどして対応に追われているという。

 そうしたことを受けて、厚生労働省から、呼びかけ。

国産ワクチン1回で効果 新型インフル臨床報告
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091016-00000075-san-soci

(一部抜粋)

安易な受診やめて
 厚生労働省の足立信也政務官は16日の記者会見で、11日までの1週間に全国約5千の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が1機関当たり12・92人と、前週の6・40人から倍増し、流行が急速に拡大していることを明らかにした。
 その上で足立政務官は「念のための受診も多く、重症者への対応が遅れる可能性が出ている」として、安易な受診を控えるよう注意を呼び掛けた。

 医療施設のパンクについては、5月来専門家がずっと指摘してきたところですが、ワクチン接種の混乱も相まって地域の医療体制は整っていないところが多いようです。
 自治体もいまワクチン接種について医療機関と調整中でてんやわんやなので、できれば「ワクチンはいつから」といった質問電話は少し控えていただいて、もうしばらく自治体からの発表を待っていただきたいところです。

 一方で、治療を受ける必要があるかどうか等、徐々に自治体等の相談窓口の充実を図っていってほしいところ…。

2009年10月13日火曜日

ワクチンまとめ

ワクチンに関する記事からです。

○新型インフルワクチン接種 「過信は禁物」
 http://www.oita-press.co.jp/localNews/2009_125541224395.html

○【感染症と人の戦い】国立感染症研究所情報センター長・岡部信彦   
  http://sankei.jp.msn.com/life/body/090926/bdy0909260406000-n1.htm

○ワクチン効果、限界も 大流行に備えて
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/swine/list/200910/CK2009100502000108.html
国産の新型インフルワクチンは、季節性のインフルエンザと「同等の安全性」といわれているので昨年度の副作用をチェック。
○季節性インフル、121人に副作用の疑い=昨年度のワクチン接種-厚労省
  http://www.jiji.com/jc/zc?k=200909/2009092900975

ということで、 ごく簡単にですがまとめです。

インフルエンザワクチンは重症化・肺炎・死亡のリスクを下げるとともに大きな流行を抑えることに有効です。

新型インフルエンザは、感染しても大多数の人が軽症ですが、ごくごく少数ながら健康な人でも重症化・死亡する例がみられることから、ワクチンの接種は個人と社会的機能を守る予防策のひとつとして大いに期待されています。

しかし、接種には、異物を体内に入れることから多かれ少なかれ副反応がつきものです。新型インフルエンザの国産のワクチンは季節性インフルエンザのワクチンと同じ製法で作られていることから、新型のワクチンは季節性と同等の安全性をもつと考えられていますが、「同等の安全性」とは「まったく副反応が起きない」ということではなく、ごくごくまれながら重篤な副反応も見られることもあります。

また、ワクチンを接種しても、絶対に感染しないというわけではありません。

最終的には、皆さん一人ひとりが新型インフルエンザに感染した場合に重症化するリスクと、ワクチンの有効性・安全性を考慮して接種するかどうかを決めることが求められています(基礎疾患をお持ちの方は、ご自身の状態が免疫力が低下した状態かどうか、コントロールされている状態か等、かかりつけ医にうかがってご相談なさるとよいと思います)。

こうしたことに加えワクチンが国内に十分に行き渡らなかったり、流行ピーク時に間に合わない可能性がある今、新型インフルエンザの予防においてワクチンは唯一の切り札ではなく、一人ひとりの予防と早期発見・早期治療が最も重要と考えられています。